しずおかフィナンシャルグループと名古屋銀行は、経営統合することで基本合意した。左から、静岡銀行の八木稔頭取、しずおかFGの柴田久社長、名古屋銀行の藤原一朗頭取 Photo by Yasutaka Nagayoshi
静岡銀行を傘下に持つしずおかフィナンシャルグループ(FG)と名古屋銀行は3月27日、経営統合に関する基本合意書を締結した。統合は2028年4月1日をめどに、新たな持株会社の下に静岡銀行と名古屋銀行を置く2バンク体制とする。長らく県内トップ地銀として君臨してきた両行が、なぜ統合に至ったのか。長期連載『金融インサイド』では前・後編で、その背景や全国の地銀への影響を読み解く。前編の本稿では、名古屋銀行がしずおかFGの“軍門に下った”理由を、現役行員やOB、銀行セクターアナリスト、地銀関係者への取材を基に、同行を語る上で欠かせない創業一族「加藤家」で生じた権力構造の変化からひもとく。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
名古屋銀・藤原頭取が隣県地銀傘下入りを決断
背景を解く鍵は創業一族「加藤家」にある
「静岡銀行との経営統合に驚きは全くない。2022年の静岡・名古屋アライアンス以降、連携が多方面で急速に進んだため、行員の間では23年ごろから静岡銀行との“統合説”がささやかれていた」
静岡銀行を傘下に持つしずおかフィナンシャルグループ(FG)との経営統合の一報を受け、名古屋銀行の行員はそう語った。
28年4月1日をめどに実施される今回の統合は、しずおかFGを株式交換完全親会社、名古屋銀行を株式交換完全子会社とする株式交換方式で行われる。新FGの名称は定かではないが、本店は静岡市葵区にある現しずおかFG本店を引き継ぐ方向で調整している。
地方銀行の越境再編は、収益基盤の強化や広域展開といったメリットが期待できるものの、地元経済を支えてきた矜持が障壁となる場合もある。とりわけ、長らく県内トップ地銀として君臨してきた名古屋銀行にとって、隣県トップ地銀のグループ傘下に入ることへの心理的ハードルは低くなかったはずだ。
ところが、実は冒頭の行員が語るように、今回の統合を受けても現場に大きな動揺は見られなかった。22年の静岡・名古屋アライアンス締結以降、行内ではしずおかFGとの連携が急速に浸透し、“静岡色”が日増しに強まっていたためだ(『愛知の地銀界に異変、名古屋銀行の頭取人事で浮かび上がる「再編機運」の正体』を参照)。
その空気を象徴する出来事がある。約2年前、静岡銀行との統合説が行内で浮上していることを報じた「週刊ダイヤモンド」(24年1月27日号)は当時、名古屋銀行の支店内で広く読まれた。複数の関係者によれば、表向きは統合が否定されていたものの、記事に目を通した行員の間では「いずれ静岡銀行との統合が公表されても不思議ではない」と受け止められていたという。
では、名古屋銀行が隣県地銀への傘下入りに踏み込んだのはなぜか。その背景を解く上で欠かせないのが、同行の創業一族である加藤家の存在だ。
現頭取の藤原一朗氏も、18年まで43年間にわたって代表権を有した故・加藤千麿氏の娘婿に当たる。強い影響力を持ち続けてきた加藤家の事情は、今回の統合の背景を見通す上でも不可欠なのだ。
次ページでは、加藤家の歴史や権力構造の変化から、名古屋銀行が隣県トップ地銀の“軍門に下る”決断に至った切実な事情を明かす。







