Photo by Yoshihisa Wada
三菱UFJ銀行は4月1日付で、大澤正和氏が新頭取に就任した。長期連載『金融インサイド』の本稿では、半沢淳一前頭取からバトンを引き継いだ大澤氏に、頭取として目指す銀行像、来年から始動する次期中期経営計画の方向性、海外戦略の勘所を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
AI活用は社内で定着したが
顧客まで届ける必要がある
――大澤頭取は、金融機関は“黒子”としての役割を果たすべきだと話してきました。一方、頭取就任の会見では「信頼される強い銀行にしたい」とも述べました。信頼される強い銀行とは、規模の大きい銀行なのか、あるいは収益力の強い銀行なのか。頭取に就任した今、どのような銀行像を目指していますか。
私は、企業や個人のお客さまが舞台の上で思う存分活躍するために、金融機関は全体を支える存在であるべきだと考えてきました。
それは黒子といえば黒子ですし、あるいはプロデューサーに近い役割かもしれません。必ずしも舞台の上で主役として出るわけではありませんが、その存在がなければ舞台そのものが成り立たない。そうした大切な役割を担いたいという思いは、今も全く変わっていません。
その上で信頼される強い銀行とは、必ずしも規模だけを意味しません。これから金融機関として打ち出していくべきことが多くあります。それを実現し、より強く信頼される金融機関になりたいということです。
個人のお客さまに対しては、AI時代にふさわしいサービスをどう届けるかが問われています。サービスの使い勝手を高めるために「エムット」を打ち出していますが、今年度はデジタルバンクも立ち上げ、より利便性の高い世界を提供していく予定です。
――2017年から亀澤(宏規)会長と二人三脚で、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略をけん引してきました。AI時代においては、何を進めれば、もう一段強い銀行になれますか。
17年から本格的にDXに携わるようになり、生成AIが急速に進化する前からさまざまな取り組みを進めてきました。その過程で、DXが銀行業務の中に浸透してきた実感があります。
AI活用ではユースケースを格段に増やしていて、社内では200を超える事例があります。例えば、口座の不正検知、市場分析の予測、マーケティング、コンタクトセンター(コールセンター)、個人営業や法人営業のプロセス、審査のプロセスなど、さまざまな業務の中に当たり前のようにAIが活用されています。
ただし、これは社内の話です。大事なのは、もう一段上にあるお客さまです。お客さまに今まで届けられなかった価値を届けていくところまで到達しないといけない。ここに非常に強い思いがあります。
――何を備えれば、顧客にとって格段に使い勝手がいいサービスになりますか。
次ページでは、大澤新頭取が「競争から外れていくリスクもある」と語る危機感の真意とともに、実現したいサービスの将来像、次期中期経営計画の方向性、海外戦略で重視する地域について聞いた。







