信金中金が8年ぶりのトップ交代、盤石の「生え抜きリレー」でも前途洋々とはいえない船出の理由柴田弘之理事長(左)の後任として新理事長に内定した須藤浩副理事長(右) Photo by Go Takano

信金中央金庫のトップが8年ぶりに交代する。須藤浩副理事長が6月の通常総会後、新理事長に就任することが内定した。信用金庫業界では、人口減少や金利上昇を背景に、有価証券運用における債券の含み損拡大や預金流出といった課題が山積する。須藤氏はこの難局にどう立ち向かうのか。長期連載『金融インサイド』の本稿では、本人が会見で語った言葉を手掛かりに、トップ選任のプロセスや信金業界を取り巻く課題、重要度が増す信金中金の役割について解説する。(ダイヤモンド編集部 高野 豪)

8年ぶりのトップ交代
3代連続で生え抜きに

 信金中央金庫は、全国254の信用金庫が出資する系統中央機関だ。信金取引先のビジネスマッチングや海外展開をはじめとした業務サポートに加え、経営状況が悪化した信金へ資本支援する「業界のセーフティーネット」としての役割を担う。

 機関投資家としての顔も持つ。信金から預かった資金(預け金)を有価証券や大企業向けの融資などで運用する。その運用規模は、全体で約47兆円(2025年9月末時点)にも上る。

 そのトップが8年ぶりに交代する。6月の通常総会で、副理事長の須藤浩氏が理事長に昇格し、柴田弘之理事長は任期満了に伴い退任する。プロパー職員がトップに就くのは、須藤氏で3代連続となった。

信金中金が8年ぶりのトップ交代、盤石の「生え抜きリレー」でも前途洋々とはいえない船出の理由理事長への就任が内定した須藤副理事長 Photo by G.T.

 簡単に須藤氏の略歴を紹介しよう。1987年3月に学習院大学を卒業後、同年4月に全国信用金庫連合会(現信金中金)へ入会。英国の現地法人社長や総合企画部長などを歴任し、13年に理事・大阪支店長に就いた。その後、常務と専務を経て22年6月に副理事長に就任した。

 理事長への就任に先駆け、須藤氏は3月19日の会見で四つの「コア戦略」を打ち出した。

 一つが、「積極的なAI活用による信金業界の業務革新」だ。生成AIの利用を念頭に、信金の営業店から本部や信金中金に対する定型的な照会に自動で対応できるような仕組みを構築するという。

 AIの活用は、取り組み度合いが信金によってバラバラだ。ある近畿地方の信金関係者は「トップクラスの信金と、全くできていないところでは、余計に差がつくだろう」と示唆する。業界全体の取り組みを底上げする意味で、信金中金に対する期待は高いといえよう。

 次に示したのが、「守りと攻めの“両利き経営”の実践」。守りとしては、経営危機に陥った信金に資本注入する「信用金庫経営力強化制度」の適切な運営とサイバーセキュリティー対策の強化に取り組む。攻めの面では、収益力強化を目的とした戦略的な成長投資にも着手する意向だ。

 そのほか、情報発信の充実による「信金業界、信金中金のブランド力向上」、これらの戦略を支える「人材力の強化」も挙げた。

 トップ就任が内定した須藤氏だが、その船出は前途洋々とはいえず厳しいものになるだろう。なぜなら、信金業界が直面する課題に対する根本的な解を示せていないからだ。次のページでは、トップの選定プロセスや信金業界が直面する課題を解き明かす。