金融インサイド#35経営統合に関する基本合意書を締結したあいちフィナンシャルグループの伊藤行記社長(左)と三十三フィナンシャルグループの道廣剛太郎社長 Photo by Go Takano

5月13日、あいちフィナンシャルグループ(FG)と三十三フィナンシャルグループは経営統合で基本合意した。あいちFGを巡っては昨秋以降、投資ファンドのありあけキャピタルが株式を買い増し、保有比率を10.9%まで高めていた。その中で決めた今回の統合は、同ファンドが保有株を他の地方銀行に売却するなどして再編の主導権が外部に移る前に、あいちFG側が先手を打った「先回り再編」といえる。金融庁も寝耳に水の電撃統合がなぜ起きたのか。長期連載『金融インサイド』の本稿で、近畿・東海で加速する再編連鎖の深層を解き明かす。(ダイヤモンド編集部 高野 豪、永吉泰貴)

金融庁も直前まで把握できず
「先回り再編」に動いた理由は?

「人口減少や金利のある世界に対応するには、早め早めに決断しなければ、時代に取り残され、他の金融機関にも置いていかれる」

 5月13日、あいちフィナンシャルグループ(FG)と三十三フィナンシャルグループ(FG)が経営統合の基本合意を発表した会見で、あいちFGの伊藤行記社長は統合の背景をそう語った。

 両社は2027年4月1日の経営統合を目指し、持ち株会社の傘下にあいち銀行と三十三銀行を置く予定だ。統合後の総資産は単純合算で11兆6209億円。愛知と三重にまたがる新たな地方銀行グループが誕生する。

 あいちFGを巡っては昨年10月、地銀を中心に投資するありあけキャピタルが5%超の株式を保有していることが判明した。ありあけキャピタルは千葉興業銀行株を買い増した後、千葉銀行に全株式を売却し、千葉銀行との経営統合を導いた経緯がある。地銀再編の“仕掛け人”ともいえる存在だ。

 そのファンドがあいちFGに照準を定めたことで、業界内では「千葉興銀に続くファンド主導の再編に発展するのではないか」との見方が広がっていた。

 そうした中、ありあけキャピタルが保有株を他の地銀に売却するなどして再編の主導権が外部に移る前に、あいちFG側が先手を打った格好だ。

 地銀再編を見る上では、金融庁の存在も欠かせない。同庁は24年秋から、地銀首脳との間で持続可能性を問う対話を本格化させてきた。経営統合や合併も選択肢に含まれるため、地銀の間では事実上の“再編勧告”と受け止められている。

 ただし、今回の再編は金融庁の外圧に押されたものではない。実は金融庁にとっても寝耳に水であり、あくまで両社の自主的な判断による経営統合だったのだ。

 次ページでは、今回の統合が投資ファンドや金融庁に主導権を握られる前に自ら動いた「先回り再編」といえる理由を、金融庁幹部や地銀関係者への取材、近畿・東海の地銀勢力図と併せて明らかにする。