ダイヤモンドで読み解く企業興亡史【サントリー編】#48

昨年、サントリーホールディングスで10年ぶりに創業家出身者がトップに就任する“大政奉還”があった。創業120年超の歴史を誇る日本屈指の同族企業、サントリーの足跡をダイヤモンドの厳選記事を基にひもといていく。連載『ダイヤモンドで読み解く企業興亡史【サントリー編】』の本稿では、「週刊ダイヤモンド」1998年1月31日号の記事「ウイスキー神話を捨てて小物ヒットで大きく稼ぐ」を紹介する。サントリーのビール出荷量は97年に過去最高を記録し、反転に向けた光明が見えてきていた。記事では、主力ウイスキー「オールド」のようなホームラン商品への依存を脱し、ビールの「モルツ」や缶コーヒーの「BOSS」のような単打が見込める商品に注力する、サントリーの稼ぎ方の変化を解説している。(ダイヤモンド編集部)

サントリーのビール出荷が過去最高
23年ぶり復活の「選任体制」が奏功

 1997年のビール商戦で、業界最下位のサントリーが意地を見せた。主力商品「モルツ」の年間出荷量(課税出荷数量)が2264万ケース(1ケースは大瓶20本換算)と前年比6.6%増の伸びを記録。加えて、発泡酒「スーパーホップス」も出荷量が前年比2倍増となり、発泡酒を含めたビール全体の出荷量が過去最高の4786万ケース(前年比27%増)となったのである。

 サントリーのシェアはビールだけで5.3%、発泡酒を含めても8.5%と小さいとはいえ、伸び率ではアサヒビールを上回っている。87年以来、じわじわシェアを落としてきたサントリーにとっては、久々の快挙といえそうだ。98年もビールと発泡酒を合わせて前年比14%増と、強気の計画を立てている。

 63年にビール事業に進出して以来、赤字が続いているが、「あと2~3年で黒字化する」と深井汪・常務ビール事業部長は自信を見せる。

 サントリーは96年12月期で、売上高7404億円のうち、ウイスキーなどの洋酒が45%、ビールが24%、食品が25%を占める。従って、「モルツ」や「スーパーホップス」は小粒のヒットではある。

 それでも、洋酒部門の売り上げがピークの83年の6481億円に比べて半分近くに落ち込んでいるだけに、ビール事業に黒字転換の可能性が見えてきたのは明るい材料である。

「週刊ダイヤモンド」1998年1月31日号「週刊ダイヤモンド」1998年1月31日号

 97年1月に、全社の営業マン1000人のうち、首都圏を中心に400人をビール専任に変更した。74年に専任制を廃止して以来、23年ぶりの復活である。

「これまではウイスキーの担当者がビールやワインの営業も兼務し、流通に対してさまざまな提案を行ってきたが、“ビールがダメでも他の商品がある”という甘えにつながっていた。ビール専任の営業マンは逃げ場がなくなるため必死になる」(深井常務)

 サントリーの営業は変わった、とみる小売り関係者は多い。ある酒類ディスカウントストア(DS)の仕入れ担当役員は、「週に1度しか来なかったサントリーの営業マンが今では週4日やって来る。ビール担当、ウイスキー担当が入れ代わり立ち代わりやって来て、次々に企画や提案を持ち掛けるため、無視できない存在になった」と明かす。

 夏の最盛期には試飲会などの販促キャンペーンを行うほか、店に応じてきめ細かい拡販キャンペーンを行う。例えば、DSに対して、仕入れでの値下げを持ち掛けたり、リュックサックなどのプレミアム商品を特別に提供することなどだ。

 このビール専任制が、モルツのシェアアップに貢献したといえよう。営業力強化に加え、マーケティングにも新手法を導入した。