iPS細胞は山中伸弥教授が開発。画期的な再生医療の切り札としてついに実用化へ Photo:Kurita KAKU/gettyimages
山中伸弥京都大教授が作製したiPS細胞由来の再生医療製品が「世界で初めて」実用化される。ただし、ブロックバスター候補との声もある一方、現段階では「条件・期限付き承認(仮承認)」である。再生医療は高市内閣でも重点政策となっているが、仮承認から本承認に進めるのか。現状、赤字企業であっても、一つの製品で業績が急拡大するのがバイオセクターだ。連載『株式相場の歩き方』の本稿では、iPS細胞の再生医療の最新状況を取り上げつつ、日本独自の制度や注目すべき6社を取り上げる。(経済ジャーナリスト 和島英樹)
iPS細胞由来の製品が仮承認
将来のブロックバスター候補も
2007年に山中伸弥教授がヒトの皮膚細胞から人工多能性幹(iPS)細胞の作製に成功してから約20年――。
いよいよiPS細胞を活用した再生医療製品の実用化への動きが本格化している。3月6日、住友化学系の住友ファーマと大阪大学発バイオベンチャーのクオリプスがiPS細胞を使った再生医療製品について、それぞれ厚生労働省から「条件・期限付き承認(仮承認)」を取得したと発表したのだ。iPS細胞由来の医療品の実用化は世界で初めてのこととなる。
再生医療は高市内閣でも重点政策となっており、高市内閣が推し進める「17の戦略分野」ではiPS細胞を含む再生医療がピックアップされている。本格的な普及が期待されるがiPS細胞由来の医療品とはどんなものか。
住友ファーマはパーキンソン病患者の運動症状の改善が期待される「アムシェプリ」が日本における仮承認を取得。これまで既存の薬物療法で十分な効果を得られないパーキンソン病患者に、新たな治療オプションを提供できるようになるという。
パーキンソン病は体の震えや筋肉がこわばり手足が動かしにくくなるなどの症状を特徴とする病気で、脳のドーパミンと呼ばれる物質が減ることで発症する。高齢になるほどかかりやすいとされる。アムシェプリは30年代の「ブロックバスター」(売上高1000億円超の大型医薬品)候補だと会社は期待している。
クオリプスは重度心不全患者向けの心筋シート「リハート」が仮承認となった。これまで薬や手術など通常の治療で十分に回復しない重度の心不全患者が対象で、手術でiPS細胞由来の心筋シートを移植することで症状を改善するという。
心不全は心筋梗塞などの虚血性心疾患や拡張型心疾患などが原因で、心臓が全身に必要な血液と酸素を十分に送り出せなくなる、慢性かつ進行性の疾患。国内で120万人、世界で6500万人以上が罹患し、患者数は増加傾向にある。心不全を含む心臓病は国内の死因でがんに次ぐ2位、世界では首位となっている。
一方、iPS細胞を使った再生医療は、開発の道半ばで撤退した企業も少なくない。26年2月には武田薬品工業が京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と10年間取り組んできた研究から撤退すると発表した。
iPS細胞を活用した再生医療は糖尿病や加齢黄斑変性でも進んでいる。本承認に向けたハードルは低くないが、今回の仮承認はiPS細胞の実用化に向けた起爆剤となるのか。
次ページでは盛り上がってきた再生医療の現在地を解説。「条件・期限付き承認制度」の仕組みを含め、再生医療で注目の日本企業6社も紹介する。







