Photo:GAROFALO Jack/gettyimages
ソニーグループが“絶頂期”を迎えている。2025年度の営業利益は過去最高となる1兆4475億円。このうち7割超をゲーム、音楽、映画で稼ぎ出す世界有数のエンターテインメント企業となった。脱・製造業のお手本ともいわれる同社は、エンタメを軸とした「新たな成長神話」を生み出したといっても過言ではない。特集『ソニー 新・神話の真贋』の#1では、ソニーグループにかつて存在した二つの成長神話の誕生と崩壊を振り返るとともに、直近3代の社長が“紆余曲折”を経て、エンタメ企業化による黄金期を実現するまでの、あまり語られることのない“経緯”を明らかにする。また、絶頂の先にある「重大な懸念材料」を指摘する。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文、今枝翔太郎)
成長神話の創造と破壊を繰り返した
ソニーの“波瀾万丈”の経営の実態と本質的な課題とは?
ソニーグループは元々、戦後の荒野から勃興したベンチャー企業だ。自分の技術で「世の中を変えたい」とか「“一発”当てたい」といった野心を抱く優秀なエンジニアが集まり、オーディオ機器などでヒット作を連発した。
他社が作らない“とがった商品”で勝負する同社の姿勢を象徴するのが、創業者の一人の井深大氏が1946年にしたためたソニー(当時の社名は東京通信工業)の設立趣意書の「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」という一節だ。
設立趣意書には、「経営規模としては、むしろ小なるを望み、大経営企業の大経営なるがために進み得ざる分野に、技術の進路と経営活動を期する」とも記されている。
実際に、井深氏はテープレコーダー、トランジスタラジオなど、大手メーカーには開発できなかった革新的な商品を生み出した。井深氏と並ぶ創業者の盛田昭夫氏は、携帯型カセットプレーヤーであるウォークマンを世界的なヒット商品に育てるなどして「米国で最も有名な日本人」とも称されるカリスマ経営者となった。
カリスマ経営者がソニーをけん引した右肩上がりの時代、ソニーには強烈な「創業者の神話」が宿っていた。この頃同社は、「トップが黒と言ったら、白いものでも黒になる」ような上意下達の社風だった。その組織文化は、スピーディーな意思決定を可能にするなど“強み”にもなったが、時に“弱み”にもなった。
後者ケースの典型が、盛田氏の鶴の一声で決まった89年の米コロンビア・ピクチャーズ エンタテインメントの買収だ。6700億円もの巨費を投じる大手映画会社の買収は、強いリーダーシップのなせる業だったが、盛田氏は買収後のマネジメントには無頓着だった。ハリウッドの映画プロデューサー出身の現地経営者による“放漫経営”を許し、結果的に、約2600億円という当時の製造業で史上最大の特別損失を95年に計上するに至った。
次ページでは、創業者の神話の次にソニーを支配した「エレキ・ものづくり神話」と「エンタメ企業化の神話」の誕生と崩壊のプロセス、さらには複数の神話の実態を解明する。
脱・製造業やエンタメ企業化を進めた出井伸之氏から現在社長CEO(最高経営責任者)を務める十時裕樹氏までの7人の経営トップの中で、最も重要な転換点となる意思決定をしたのは誰だったのか。また、エンタメ企業化の神話は、一貫性のある改革の成果ではなく、試行錯誤の末、結果的に出来上がった側面が強いことも明らかにする。








