Photo by Tohru Sasaki
2023年度に3000億円超の最終赤字に沈んだ住友化学は構造改革を進めてきた。足元ではナフサショックや国内の石油化学再編など経営環境の激変が続くが、25年4月にトップに就いた水戸信彰社長は世界トップ級の創薬力を持つ農薬事業と、最先端の半導体材料への集中投資を加速させている。特集『化学サバイバル!』の本稿では、水戸社長に改革の進捗に加え、「新生・住友化学」を見据えた2300億円の戦略投資の方向性、製薬子会社の住友ファーマの将来像などを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 金山隆一)
石油化学事業改革でまだ残る課題
サウジの次はシンガポールと国内
――サウジアラビアのサウジアラムコとの合弁企業「ペトロ・ラービグ」の改革をはじめとする大胆な構造改革を進めました。2024年度以降に取り組んできた一連の改革は、今どのあたりまで来ていますか。
80%ぐらいまで進んだと思います。ただ、残りの20%が非常に難しく、チャレンジングな課題として残っています。石油化学の事業環境が厳しい状況であることは変わらず、ここ数年で劇的に改善するとは考えていません。
そのため、シンガポールで展開する石油化学事業の構造改革も避けて通れず、さらに一歩踏み込んで進めていく必要があります。シンガポールではJVパートナーや川下メーカー、シンガポール経済開発庁(EDB)との調整が必要で、改革は容易ではありません。
最も大きな課題は、川上のエチレンセンターであるPCS(ペトロケミカル・コーポレーション・オブ・シンガポール)の再構築です。現在は中東紛争の影響によりフォースマジュール(不可抗力)宣言をしていますが、この紛争が落ち着いた後にどのような絵が描けるのか、並行して多角的な検討を重ねています。
石油化学コンビナートは今でもシンガポールにとって重要な産業で、(川下である)誘導品メーカーに原料を供給する「共通インフラ」です。その機能をどう残し、最適化するかを、(PCSの合弁相手である)英シェルや誘導品メーカーと議論していきます。
――基礎原料のエチレンやプロピレンの収益性を確保するのは難しい。
エチレンやプロピレン自体の差別化は難しいですが、長年の安定操業を高く評価してくれる顧客はいます。今後は、安定供給に対する適切な対価を支払ってくれる顧客に集中し、ビジネススキームを「より高くPCSの製品を評価していただける形」へと変革していきます。
一方で、(シンガポールでもう一つ展開する)川下のTPC(ザ・ポリオレフィン・カンパニー)が特に注力しているのが、車載用蓄電池(キャパシタ)のセパレーター用ポリプロピレンです。世界でも製造できる企業が限られる薄膜材料で、このような高付加価値製品に経営資源を集中させていきます。
――国内の石油化学事業の再編については、どのような将来像を描いていますか。
千葉地区の川上分野については、丸善石油化学と26年中にエチレン事業を統合し、「京葉エチレン(4EP=第4エチレン)」に集約する計画が順調に進んでいます。川下分野でも、ポリエチレンとポリプロピレンの統合がかなり進んでおり、住友化学の京葉地区における石油化学事業は、川上・川下共にすでに再編の大部分を完了しているという認識です。
――三井化学の橋本修会長は「千葉(京葉地区)は一体化していく方向に進むべきだ。用役や保全、研究開発まで一つにまとめた方が効率的で無駄がなくなる」と発言されています。この考えに賛同しますか。
次ページで、水戸社長は27年度の「ROE8%」を市場から評価されるための必達目標と位置付ける。鍵となる「新生・住友化学」を見据えた半導体材料や次世代農薬の成長戦略とは。一方、iPS細胞製品の国内承認を取得した製薬子会社、住友ファーマのベストパートナー模索の進捗のほか、全株売却による完全切り離しの可能性についても聞いた。







