地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦#16Photo:Jose A. Bernat Bacete/gettyimages

金利のある世界で、地方銀行の「預貸率」に対する見方が変わっている。マイナス金利時代は、預金を効率よく貸出金に回せているかを示す指標として、高い預貸率が評価される側面があった。だが足元では、預金基盤の弱さや融資余力の限界を見る指標としても注目され、地銀のIR説明会で預貸率の“上限”を巡る質問が相次いでいる。実は、各行の預貸率の水準は地銀再編の行方にも影響する。長期連載『金融インサイド』内の特集『地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦』の#16では、地銀全95行の預貸率ランキングを作成。預貸率管理で厳しい立場に置かれやすい地銀の「三つの条件」と、その実名を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

高い預貸率は強みから制約へ
地銀が警戒する融資余力の“上限”

 金利のある世界で、銀行の預貸率の見方が変わっている。

 預貸率とは、総預金に対する貸出金の割合を示す。数値が高いほど、集めた預金を貸出金に多く振り向けていることを意味する。

 マイナス金利時代の地方銀行の悩みといえば、景気の停滞によって地域の資金需要が伸び悩み、優良な融資先を開拓できないことだった。預金を集めても国債利回りは低く、運用先も限られる。だからこそ高い預貸率は、限られた貸し出し需要を取り込み、預金を効率よく収益化できている証しと見なされていた。

 ところが、金利上昇によって預貸率の意味は一変した。

 金利のある世界では、預金で調達した資金は、貸出金だけでなく、国債や付利対象の日本銀行当座預金で運用しても利息収入を得られる。預金の価値が格段に上がったのだ。この環境で預金を十分に獲得できず、預貸率が高まり過ぎれば、地域に資金需要があっても融資の拡大に制約がかかってしまう。

 実際、2026年3月期のIR説明会では、預貸率の上限を巡る質問が全国の地銀で相次いだ。

 例えば大垣共立銀行では、足元の預貸率が80%に迫っていることを踏まえ、「今後、営業エリアの貸し出し需要が強まった場合、預金制約によって地元の需要に応えられなくなることはないか」という質問が出た。同行は「預貸率の上限は85%程度とみており、現時点で大きな支障があるとは考えていない」と回答している。

 預貸率の上限に明確な基準があるわけではないが、地銀全体では80~85%程度を一つの目安として意識する例が目立つ。

 預貸率が上限に近づけば、地銀は難しい判断を迫られる。貸し出し案件をより厳しく選別するのか、有価証券の残高を減らして原資を捻出するのか。預金金利を引き上げて資金を集めるのか、市場調達や債権流動化を増やすのか。いずれの手段にも、収益性や財務の安定性とのトレードオフがある。

 単独で打てる手が少なくなれば、預金余力のある銀行との経営統合も現実味を帯びる。金利のある世界では、預金基盤の強弱が、地銀再編を動かす新たな引力になり得るのだ。

 そこでダイヤモンド編集部は、最新の26年3月期決算を基に、地銀全95行の預貸率ランキングを作成した。

 次ページでは預貸率ランキングと併せて、預貸率を見る上で厳しい立場に置かれやすい地銀の「三つの条件」と、その条件を満たす地銀を明らかにする。