地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦#21Photo by Yasutaka Nagayoshi

今年3月、名古屋銀行と経営統合に向けて基本合意したしずおかフィナンシャルグループ。柴田久社長はダイヤモンド編集部の取材に応じ、自身がグループ内で経営統合にずっと慎重だったと明かした。「1+1=2にしかならない経営統合ならやらない」と語っていた柴田社長は、なぜ名古屋銀行との基本合意に踏み切ったのか。長期連載『金融インサイド』内の特集『地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦』#21では、その真意と、単なる“足し算統合”に終わらず、1+1を3にも4にもする経営統合のポイント、次なる再編相手の条件を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

「1+1=2」では経営統合しない
柴田社長が慎重姿勢を転じた理由とは

――今年3月、名古屋銀行との経営統合に向けた基本合意書を締結しました。どのような経緯で基本合意に至ったのでしょうか。

 2022年4月に、名古屋銀行と静岡銀行で「静岡・名古屋アライアンス」を締結しました。静岡と愛知は製造業、特に自動車産業の比重が大きいという共通点があり、EV(電気自動車)シフトや脱炭素の流れの中で産業構造が大きく変わっていく。そうした変化に対し、県をまたいで地域産業を支えられないかと考えたのが出発点です。

 一方でアライアンスには限界もあります。法人格が違えば、お客さまの情報を簡単に共有することはできません。より良いサービスを提供するには、もう一歩踏み込み、経営統合すべきだと判断しました。

 名古屋銀行との店舗の重複は少なく、中京圏から首都圏までの大きな経済圏を基盤にできる。こうした展開ができる金融グループは他にありません。

 この地域には、中小企業を含め、世界に羽ばたく可能性を持った企業が数多くあります。そうした企業を一緒になってサポートしていきたい。そこが大きな決め手です。

――アライアンス締結の時点で、将来的な経営統合も考えていましたか。

 考えていませんでした。むしろグループの中で経営統合に最も慎重だったのは、私かもしれません。

――なぜ慎重だったのですか。

 実務を担う担当者同士は、お互いの企業文化を理解するようになり、「一緒になれば、もっと良い形がつくれるのではないか」という議論を始めていました。

 ただ、私は資本市場に向き合い、投資家に説明しなければならない立場です。自分の中で納得できない限り、決断できません。

 私はずっと「1+1=2にしかならない経営統合ならやらない」と言っていました。名古屋銀行の当期純利益が約200億円、当社が約900億円だとして、足して1100億円になるだけなら、あえて統合する必要はありません。

 大事なのは、1+1が3にも4にもなるかどうかです。検討を重ねる中で、その感触が次第に確信に変わっていきました。

 逆に、経営統合でうまくいった事例はあると思いますか?

――推進力のある地方銀行が主導するグループでは、効率化やシナジー創出が進んでいるケースもあると思います。一方で、特に規模が同程度の地銀同士の対等統合では、FGとしての意思決定が進みにくく、バックオフィスの効率化を含めて課題を残しており、うまくいっていない地銀も多いと思います。柴田社長は、地銀の経営統合で「1+1=2」を上回るケースは少ないとみていますか。

 そう思いますね。それなら、アライアンスで十分ではないかと思います。

――地銀同士の経営統合が「1+1=2」にしかならない壁を越えられるか否かは、どこにポイントがあるでしょうか。

地銀同士の経営統合で「1+1=2」の壁を越えるケースは少ないとみる柴田社長は、なぜ名古屋銀行との統合ならうまくいくと確信を深めたのか。次ページでは、統合の成否を分ける条件に加え、県内再編の可能性、「世界一の地方銀行」宣言に込めた真意を聞いた。