Photo by Masato Kato
セブン-イレブン・ジャパンは長年、国内コンビニエンスストアのトップチェーンとして君臨してきた。しかし、競合のローソンやファミリーマートが業績を伸ばす一方、セブンは2025年度業績予想を下方修正するなど、インフレ下で勝ち筋を見失った状態だ。さらに、足元では安さを武器にしたトライアルGOが首都圏に進出するなど、競争環境は厳しさを増している。セブンは価格設定をどう考えるのか。特集『揺らぐコンビニ3強 トライアルGOの衝撃』の#9では、今年を「変革の元年にする」と意気込む阿久津知洋社長に、インフレが加速する中での戦略を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 下本菜実)
通期業績予想を下方修正
国内コンビニをどう立て直すか
――セブン-イレブン・ジャパンの社長に就任して、半年がたちました。手応えはありますか。
2026年2月期の中間決算は厳しい結果となりましたが、確実に変わってきているという手応えは感じています。まだ始まったばかりではありますが、社内の体制や店頭での価値の更新が少しずつ進んでいる。振り返ったとき、25年がセブン-イレブン・ジャパンの変革の元年になったといわれるような、そんな年にしたいと考えています。
――9月から、人気アイドルグループ「嵐」の櫻井翔さんや相葉雅紀さん、俳優の天海祐希さんを起用した新CMシリーズが放映されています。コミュニケーションやマーケティングを変えていくのでしょうか。
これまでのセブンのお店や商品は「おいしいけれど、面白くない」と思われていたり、「真面目過ぎる」と捉えられていたりしました。自分たちが発信しているコミュニケーションを振り返っても「おいしいものを出している」というところで止まってしまっていて、面白い取り組みが伝わるような工夫がされていなかった。
ふと気付いたら、若年層はセブンイレブンをあまり好きではないらしい、というデータが出てくるような状況でした。社長に就任してすぐに、コミュニケーション本部を新設し、マーケティングの部署とは別でSNSでの接点強化にも取り組んでいます。
――若年層をターゲットにしていくのですか。
若年層をターゲットにしていなかったわけではありませんが、過去に打ち出してきた「あいててよかった」「近くて便利」のコンセプトが響くのは、主に忙しく働いている大人なんです。
若年層が優先されていなかったことは事実かなと。今、コミュニケーションの部分で「なにがあるかな、セブン-イレブン。」を打ち出しています。「あいててよかった」「近くて便利」に続くワードというわけではないのですが、なにがあるかなと足を運びたくなる期待感をお店でつくっていきたい。
――CMの刷新と同時期に、2種類の具材を楽しめる高価格帯の「旨さ相盛おむすび」を大々的に打ち出しました。
実は、相盛おむすびの開発においては、商品企画の考え方そのものを改めました。これまでのキャンペーン商品は、約2万1000店に欠品なく供給できることが前提になっていました。そうなると、原材料の調達や製造キャパシティーの都合から、商品の幅が限られてしまう。新商品を出しても、どこか同じようなイメージになってしまうのは、そこに原因があると考えました。
今回の相盛おむすびでは、加盟店に事情を伝えた上で、1店舗当たりの発注個数の上限を設けました。今のお客さんはおいしさ以外にも、見栄えや楽しさ、これって新しいよね、というような“イミ消費”を求めている。これまでは、発注制限をかける商品ではCMを控えていたのですが、今回はやってみようと。
8月のおにぎりの売り上げは前年を少し超えるぐらいでしたが、相盛りおむすびを投入した9月は前年同月比16%増と伸長しました。10月も7%増ほどに留まっていて、全カテゴリーの中で米飯が2番目に伸長しています。
――中間決算の営業利益は、ホールディングスの中でセブン-イレブン・ジャパンのみが計画を下回り、前年比4.6%減の1217億円でした。また、セブン&アイ・ホールディングスの26年2月期の営業利益予想は4240億円から、前年比4.0%減の4040億円に改めました。なぜ、業績が振るわなかったのですか。
26年2月期の中間決算では、国内コンビニエンスストア事業のみが計画を下回り、営業利益は前年割れとなった。目下、セブン-イレブン・ジャパンが取り組んでいる、構造的な問題とは何か。トライアルGOへの対抗策はあるのか。次のページでは、阿久津社長が下方修正を招いた要因のほか、インフレが進む中での商品企画について明かした。







