エネルギー動乱Photo:JIJI

今夏、「パワーGX」と名付けられたパッケージ案が政府から公表された。一見、脱炭素を推進する名前だが、実態は脱炭素に主眼を置いたものではなかった。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、政府が主導するパワーGXが脱炭素を後退させるかもしれない三つの懸念点を解説する。(国際大学学長 橘川武郎)

POWERR GXに重なる2文字のR
GXは主眼ではない?

 2026年8月26日に開催されたグリーントランスフォーメーション(GX)実行会議で、政府は、「エネルギー需給構造強靱化総合パッケージ」(以下、総合パッケージ)を発表した。この総合パッケージには、「パワーGX」という略称が付与されている。

 まず、注目したいのは、この「パワーGX」の英語表記である。それは、GXを加速するという意味合いを持つ「POWER GX」ではない。じつは「POWERR GX」なのであり、「R」が重なっている。

「POWERR GX」は、「Policy Package for Wide Energy and Resources Resilience through GX」の下線を付した文字をつなぎ合わせた造語であり、主眼は、あくまでエネルギー需給構造の強靭化に置かれている。言い換えれば、「パワーGX」という日本語表記が連想させるようなGXの加速に主眼を置いたものでは、必ずしもないのである。

 もちろん、この総合パッケージは、「through GX」とうたっている以上、GXにも目を向けてはいる。26年8月26日のGX実行会議に提出された「エネルギー需給構造の強靱化に向けた我が国GXの加速について “POWERR GX”」と題する内閣官房GX実行推進室の資料は、(1)化石燃料の調達安定性の抜本向上と、(2)GXの加速・強化という、「2つの強靭化」に取り組むとしている。

 しかし、ここで直視しなければならないのは、今回発表された総合パッケージは、「2つの強靱化」を同等に打ち出したものではなく、(1)の「化石燃料の調達安定性の抜本向上」に重点を置いたものだということである。総合パッケージについて報じた26年8月27日付の「日本経済新聞」は、「26日に打ち出したパッケージの中心となるのは原油輸入先の分散やパイプラインの建設支援といった化石燃料の安定供給対策だ」(3面)と、述べている。

 同紙は、総合パッケージの内容を紹介する際に、「原油・ナフサ代替調達補助」(1面)、「原油調達『過渡期』の支援」(3面)という大見出しを掲げる一方で、中見出しで「GXとの整合性、論点に」(3面)と指摘したのである。

 本当に、「パワーGX」は、GXを加速・強化するものになるだろうか。現状では、この問いに肯定的な答えを導くことは、困難である。次ページでは、その理由について掘り下げる。