日揮・千代田化工・東洋エンジ エンジ「御三家」の反転攻勢写真提供:日揮ホールディングス

AI・データセンターの急拡大やエネルギー安全保障を背景にLNG(液化天然ガス)プロジェクトがグローバルで動いている。日本の日揮ホールディングスと千代田化工建設は大型LNGプラントの設計・調達・建設を遂行できる世界でも指折りのコントラクターだが、大型プロジェクトの損失で全社業績が沈む経験も重ねてきた。では両社は空前のLNGブームを前にどのような戦略を描いているのか。長期連載『エネルギー動乱』内の特集『日揮・千代田化工・東洋エンジ エンジ「御三家」の反転攻勢』の本稿では、世界で活発化するLNGプロジェクトのリスクと課題に加え、両社のLNG戦略を分析する。(エネルギージャーナリスト 宗 敦司、ダイヤモンド編集部 金山隆一)

「脱炭素の現実解」でLNG需要は7億トンへ
巨大プラントを造れるのは世界でわずか数社

 AI・データセンターの急拡大でLNG(液化天然ガス)需要が高まっている。英シェルは世界のLNG需要が現在の年間約4億2000万トンから2050年には約7億トンへ65%増えると予測する。

 LNGプラントを手掛ける日揮ホールディングス(HD)の佐藤雅之会長兼社長CEO(最高経営責任者)も、LNGについて、「安定供給できるし、価格も手頃だし、CO2(二酸化炭素)の排出度合いという観点でも現実解ではないでしょうか」と語る。ただし、問題は、その需要増に供給がどこまで応えられるかだ。

 天然ガスの海上輸送には、マイナス162度まで冷却して液化する巨大プラントが必要になる。大型の冷凍装置やコンプレッサー、貯蔵タンクなどを組み上げ、数千人規模の作業員と世界中の資機材を管理する。案件によっては総事業費が兆円規模に達する。

 大型LNGプラントを主契約者として遂行できる企業は世界でも、日揮、千代田化工建設、米ベクテル、仏テクニップ・エナジーズなど4~5社程度にとどまる。日本には、その希少な「造り手」が2社も存在しており、LNGブームは絶好の商機に見える。

 現在、LNGプロジェクトが最も活発なのは米国だ。安価なシェールガスを原料にできるメキシコ湾岸には既設あるいは建設中のLNGプラントに加え、既存設備の増設、新設、浮体式LNG生産設備(FLNG)まで10件を超える新規案件が相次ぐ。米国の天然ガス価格の指標であるヘンリーハブ価格に連動して原料ガスが調達できるため、コスト競争力も高い。

 ところが、日揮の佐藤会長兼社長は米国のLNGについて、「米国の案件で持っているものはない」と答える。トランプ政権が推進するアラスカLNGを含め、少なくとも足元では、米国は日揮が具体的な受注案件として追う主戦場にはなっていない。

 米国で活発化するLNGの新規プロジェクト計画。しかし日揮だけでなく、千代田化工もこの熱狂には極めて冷静だ。なぜか。その理由と対策を両社の対応から見ていくと、世界のLNGプロジェクトが抱えている問題が浮かび上がる。次ページで明らかにする。