コロナ禍で降って湧いた“オイシイ”案件
りそな銀行の判断に疑問の声も
投資銀行業務に詳しいメガバンク関係者は、りそな銀行が船井電機の買収資金を受け皿会社に融資したことについてこう苦言を呈する。
「通常は買収後のキャッシュフロー創出力や成長戦略、経営者の経営能力の有無について、ヒアリングなどを通じて、かなり厳格に審査します。船井電機買収のケースで(りそな)銀行がどのように判断したのか疑問です。うちの銀行ならLBOの資金は出さないと思います」
だが一方で、りそな銀行の判断は妥当だとする銀行関係者もいる。関西地方のある地方銀行関係者はこう話す。
「創業者が亡くなってからの船井電機は赤字続きで、経営陣の交代や他の電機メーカーの傘下に入るなど、何らかの対策は必要な状況だったはずです。でも、支援するところはありませんでした。じゃあ、銀行員が船井電機のような家電メーカーを立て直せるかというと、それも難しい。銀行はあくまで資金の貸し手で、家電メーカーを経営する能力なんてありません。そこでりそな銀行は、座して死を待つのではなく、秀和システムの買収に賭けたんだと思います。りそな銀行はよくやったと思いますよ」
銀行は、企業や国民から集めた預金を企業などに貸し付けて、そこから得られる利息で儲けている。だが、2016年以降はマイナス金利政策が導入されており、銀行にとって儲けの源泉である金利がほぼゼロになったことで、得られる利息が減ってしまった。
そんな中、買い手企業へ多額の資金を貸し付けるLBOは、銀行にとって“おいしい”案件だ。通常の企業への貸し付けよりも金利が高く、利息が多く得られる。
特に秀和システムが船井電機を買収した2021年5月は、コロナ禍の影響で日本中の経済が大混乱していた時期。資金を新たに借り入れて投資をするような企業も少なかった。
そこに降って湧いた秀和システムによるLBOローンは、りそな銀行にとって願ってもない案件だったのだろう。
こうして秀和システムの完全子会社になったことで、船井電機の経営体制も定まった。
2022年6月には上田氏が代表取締役社長に就任。 この時点で、船井電機の100%株主である秀和システムHDの社長も、そして秀和システムの株主も上田氏。上田氏はここで、船井電機の絶対的な権力者となった。
(※本稿は片田江康男記者の新刊『社喰い』(ダイヤモンド社)を抜粋・編集した記事です)
記者。1979年東京都生まれ。2003年ダイヤモンド社に入社。2006年より『週刊ダイヤモンド』記者。これまで取材したテーマは東日本大震災後の東京電力問題や、大手生命保険会社における金銭詐取問題など。2021年からM&A業界を取材。M&Aのダークサイドに踏み込んだ『社喰い』(ダイヤモンド社刊)が好評発売中。
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