内向型の人間は本当に社会で不利なのか? 自己主張ばかりの外向型より、実は内気でシャイな人間のほうが優位に立てるのでは!?――全米ベストセラーとなった『内向型人間の時代』(講談社)の著者に、内向型性格の特徴や傾向、社会で成功する秘訣を聞く。(聞き手/ジャーナリスト 大野和基)

1日に18時間働く
ウォール街の弁護士から作家へ

スーザン・ケイン
Susan Cain
1968年生まれ、プリンストン大学、ハーバード大学法科大学院卒。ウォール街の弁護士を経て、ライターに転身。『ニューヨーク・タイムズ』紙、『タイムズ』紙などへ、内気な性格をテーマに寄稿している。他にも、メリルリンチや法律事務所や大学などで交渉術の講師も務める。

――作家になる前は、企業弁護士だったそうですね。

 そうです。2001年に辞めましたが、その前は7年間ウォール街で弁護士をしていました。実は私は4歳の時からずっと、作家になりたいと思っていました。でも何となくその夢のことを忘れていたのです。それで、そのままロースクールに行って、弁護士になりました。弁護士は楽しかったですよ。非常に面白かったです。でも振り返ると、自分が本当にやりたいことにたどり着くには、遠回りだったようです。

――何が契機で、夢のことを思い出したのですか。

 おかしな話ですが、ウォール街の弁護士は毎日18時間働くので、燃え尽き症候群になってしまったのです。それで、何をするあてもなく、休暇をとりました。世界旅行でもしてみようかとも思いましたがそうはせず、ふと気づいてみるとライティングのクラスを受講しようと、申し込み書類を書いていました。そして、まさにクラスの最初の日、席に着いたら、「これだ!、これこそ私がやりたいことだ」と、非常にはっきりと思ったのです。それ以降は、できるだけ執筆に時間を費やせるように人生を組み立て直しました。

――自分の夢について思い出して、次にはどうやって書くテーマを探し出したのでしょうかか。最初から“introvert”(内向型人間)について書こうと思っていたのですか。

 最初から“introversion”(内向型性格)について書いていたわけではありません。詩の形で回想を書いたり、劇を書いたり、少し小説を書いたり、短編小説もいくつか書きました。どれもまだ私のパソコンの中に入っていますが、出版しようとは思いませんでした。そうこうするうちに、この<内向型性格>について書こうというアイデアにたどり着いたのです。実際のところ、今までの人生でずっと考えていたテーマです。これで行けると思い、エージェントを見つけて、出版しました。特に理由はないのですが、自分がこのテーマで本を出すということは、心のどこかでわかっていました。