税理士リバイバル#11Photo by Masato Kato

辻・本郷税理士法人を核とする辻・本郷グループは、全国に80以上の拠点を持つ、国内最大規模の税理士法人グループである。2000年代中盤から全国で中小の税理士事務所を買収し、業界に先駆けて拡大路線を走ってきた。ただし近年は、積極的な拡大路線からは距離を置いているようにも見える。業界再編の仕掛け人として名をはせた辻・本郷は今、次の一手をどのように考えているのか。特集『税理士リバイバル!』の#11では、グループ会長の本郷孔洋氏への直撃インタビューをお届けする。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)(注:辻の字は正式には一点しんにょう)

辻・本郷が生まれた理由
「必ず合従連衡が進むと思った」

――辻・本郷税理士法人は、2002年に辻会計事務所と本郷公認会計士事務所が合併して誕生しました。辻敢先生とは早稲田大学の同窓で、辻先生の方が10歳ほど年上ですね。

 辻先生とはたまたま同じ大学の先輩だったんです。もともと面識はなくて、監査法人の方が紹介してくださって、一緒になりました。当時はちょうど税理士法の改正があり、事務所を法人化できるようになったタイミングでした。

 監査法人は中小の合従連衡が進み、最終的に大手4社になった。これと同じような現象が、税理士業界でも必ず起こると考えていました。

 “先手必勝”と考えたわけではなくて、後になって合併するのであれば、早い方がいい。その矢先に、辻先生の方からお話を頂いたのです。監査法人の例を見て、合従連衡が進んでいくと考えていなければ、合併の話を断ったかもしれません。

――現在でも税理士法人のM&Aは活発に起こっています。ある程度の規模がある法人を買収する場合、カルチャーの統合が難しいとされますが、辻・本郷ではいかがでしたか。

 02年に法人を設立してから3年ほどは、辻先生の事務所は渋谷に、私の事務所は新宿にありました。でも、別々の場所で仕事をしていては、カルチャーの統合は難しい。腹を決めて、事務所を一体化したのが05年のことでした。新宿で、別のところを借りてね。

 そうすると、毎日のように顔を合わせるので、自然と仲良くなるのです。それでも、辻先生の事務所からは2割の社員が抜けました。やっぱり、法人を設立してから最初の3年間は大変でした。

 でも一つの事務所にすると、カルチャーの統合以外にも、プラスの効果が期待できます。本当は「1+1」は2じゃないですか。ところが、統合が進むと1+1が3くらいに見えるようになります。ですから、私は合併を選んだ先生方には、事務所を一緒にした方がいいと勧めています。

――事務所が大きくなれば、期待感みたいなものが生まれますよね。

 合併した直後は、ヒルズ族という言葉が生まれた頃で、IT企業やベンチャー企業の調子が良かった。うちも、そういった企業のクライアントが増え、業績は右肩上がりでした。でも、調子が良いとその半面、倦怠感が出てくるんです。

 朝礼でも社員の反応が悪くて、「業績も悪くないし、このままでいいんじゃないか」という空気がありました。それで、このままでいいのだろうかと思っていた矢先に、地方の税理士法人のM&A案件が舞い込んだのです。

――辻・本郷税理士法人は2000年代半ばから、精力的に地方の税理士法人を買収し始めました。当時を振り返って、どう評価しますか。

辻・本郷を率いる本郷会長の再編に対する考え方や具体的な手法は、税理士業界内で常に注目され、成長意欲の高い若手税理士にとって“研究対象”となっていた。だが近年の辻・本郷は、かつてのように積極的にM&Aを仕掛けておらず、業界再編の流れから距離を置いているようにも見える。今、本郷会長は何を考えているのか。次ページで、再編についての考えとともに、勝ち残る税理士法人の条件について話を聞いた。