市場を驚かせた米財務省の「バイバック倍増」、長期債市場への政策当局介入が懸念される“本当の理由”Photo:Anadolu/gettyimages

トランプ関税返還による税収急減
財政赤字拡大への懸念抑制が狙い!?

 世界的な長期金利の上昇が続くなか、米国の財務省が7月18日に、突然、満期10年超の米国債のバイバック(買い入れ消却)を倍増させると発表し、市場を驚かせた。

 米国債金利はこのアナウンスを受けて急低下したものの、その後は上下して方向感が定まらず、この政策に対しては、市場においてさまざま批判が出ている。

 そもそも、財務省がバイバック増額という政策を実施することになったのは、期間の長い米国債(10年超)の金利が7月以降大幅に上昇し、30年債金利が金融危機前の2007年以来となる5.2%を付けるような状況になっていたためだった。

 そのきっかけは関税の返還が始まったことだ。米最高裁でIEEPA(国際経済緊急権限法)による相互関税などのトランプ関税が違法とされたことに伴う関税の返還により税収が急減しており、それによって財政赤字がGDP(国内総生産)比で6%という高水準に達しつつある。

 市場が、財政赤字拡大などへの警戒感を強めて、米国債が売られる中で、米国の財務省を率いるベッセント長官は、市場メカニズムを熟知している人物であるがゆえに、長期債市場におけるリスクプレミアムの大幅な拡大を未然に防ぎたいと考えたのだろう。

 だが今回の措置には、市場関係者を中心に「当局による市場介入そのものの是非」や「インフレを助長するリスク」などを挙げて批判が少なくない。

 すでに、政策当局による債券市場への介入は、2010年代に日米欧の中央銀行が軒並み長期債の大量購入政策を試みたことで、効果や副作用について、一定の知見が得られ、国債購入政策は、経済政策のオプションとして一定の市民権は得ている。

 それなのに、米国財務省による「バイバック倍増」への批判が相当大きな声となっているのはなぜなのか。

 やはり看過できない大きなリスクが懸念されるからだ。