実際には「デフレ」は日本だけでなく、香港やスイスなどでもみられた。『経済財政白書』2010年度版は、各国の物価動向の要因を分析し、(1)需給ギャップ(需要不足)が大きいほど、(2)バブルの反動で資産価格が低迷している国ほど、(3)自国より賃金や物価が大幅に低い国・地域(たとえば中国)との貿易の比重が大きいほど、物価は下がっていると分析した。

(3)では、中国との関係でデフレ的となった例として、日本とともに香港を挙げている。このようにクールに総合的にとらえるべきだろう。

賃金の停滞がデフレを招く
日本で伸びないサービス価格

 また経済学者の吉川 洋(2013『デフレーション』日本経済新聞出版社)によって、日本の「デフレ」は賃金の停滞・低下にもとづいていること、財の価格は各国とも小幅低下ないし横ばいだが、日本では(労働集約的な)サービス価格の上昇がない点に特徴があること、が共通理解となった。

 経済学者の脇田 成(2024『日本経済の故障箇所』日本評論社)も、日本のサービス価格低下とサービス賃金低下が目立ち、背景に非正規(特に団塊世代の再雇用と女性)の増加があると指摘した。

 同書はまた、日本の賃金の低水準と伸び悩みが際立っており、しかも賃金が労働生産性上昇を下回る乖離が生じていること、経済学の考え方に従うなら、これは企業側の買手独占力の上昇、労働者側の交渉力の低下によると述べる。

 これらは筆者もかねてから主張してきたことと共通であり、賛同する。

 なおこうしたことは完全に日本独自の現象というより、程度や現われ方の差はあれ、世界的な傾向でもあろう。元・経済企画庁長官で元・大和総研理事長の宮崎 勇、元・大和総研理事の本庄 真、経済学者の田谷禎三(2021『日本経済図説(第5版)』岩波新書)は、1980→2006年の所得は、上位層での上昇に対し、多数を占める中位層(特に製造・事務)で低下し、その原因はグローバル化と技術変化がおよそ半分ずつであるとのInternational Monetary Fund(国際通貨基金)の分析を紹介している。