クルマが自転車を追い越そうとすると
黄色いセンターラインを越えてしまう
その弊害とは、新しいルールと既存のルールを同時に守るのが困難になったというものです。
例えば、片側1車線の細い道路で、クルマが自転車の右側を通過しようとする場面を考えてみましょう。道幅が狭いため、自転車との間に十分な間隔を確保するには、対向車線側にはみ出さざるを得ないことがあります。
しかし、黄色いセンターラインが引かれた道路では、追い越しのために対向車線側にはみ出すことが禁止されています。つまり、自転車との間隔を十分に確保しようとすると、今度はセンターラインに関するルールに抵触しかねないのです。
このような道路での対応が難しくなった Photo:Taro Hama@e-kamakura/Gettyimages拡大画像表示
かといって、自転車を追い越さずに「安全な速度」で後ろをゆっくり走れば、後続車の流れを滞らせる恐れもあります。
この問題を理解する上で、押さえておきたいのが「追い抜き」と「追い越し」の違いです。
交通ルール上、走行している車線から進路を変えずに前方の車両の側方を通過するのが「追い抜き」。車線変更をするなど進路を変えてから前方の車両の側方を通過し、その前に出るのが「追い越し」です。
改正道交法では、クルマが自転車を追い越すこと自体が厳しく規制されたわけではなく、先述した「十分な間隔」や「安全な速度」に関する新たな規制も、「追い越し」をする場合には適用されません。
ですが、黄色いセンターラインが引かれた狭い道路では、対向車線側にはみ出しての「追い越し」が禁じられているほか、十分な間隔を空けた上での「追い抜き」もできないため、ドライバーが判断に迷う場面が生じているのです。
難しい状況に置かれたドライバーは、違反を知りながらも「黄色いセンターラインをこっそりはみ出して自転車を追い越す」といった苦肉の策を取ることが多いようです。
実際にフジテレビが調査したところ、特定の地点で自転車の横を通過したクルマ80台のうち、7割超の58台が「黄色のセンターラインを越えていた」とのことです。
道交法に詳しい後藤寛弁護士は、こうした状況を「ドライバーの規範意識を著しく低下させ、交通法秩序の形骸化を招き得る深刻な問題です」と危惧します。

福岡市生まれ。早稲田大学法学部卒。カーセンサー編集部(株式会社リクルート)勤務を経て弁護士に(鹿児島県弁護士会所属)。クルマに関する法律問題にとどまらず、一般民事事件、刑事事件、企業顧問など幅広く活動している。
また、路線バスや配送トラックなど、法令順守が求められる事業用車は、黄色いセンターラインを「こっそりはみ出す」といった対応はできません。
そのため、バスやトラックが自転車の後ろをゆっくりと走らざるを得ず、スムーズな運行に支障が出て、渋滞が発生する場所も出てきているようです。







