なぜ「のぞみ」の運賃は
上限額より安かったのか?
運賃制度のもうひとつの柱が「上限認可制」だ。認可される運賃は上限額であり、実際の運賃は各社の経営判断のもと、上限運賃の範囲内で設定できる。実は「のぞみ」と「みずほ」の特急料金はこれまで、上限額より低い金額で設定されており、今回の値上げは現行額を上限額まで引き上げるというものである。
なぜ上限額より安い料金設定だったのか。「のぞみ」が登場したのは1992年のことである。従来の「こだま」「ひかり」が最高速度時速220キロだったところ、「のぞみ」は時速270キロに引き上げられ、東京~新大阪間を約30分短縮した。
最高速度の大幅引き上げと抜本的な時間短縮には、新型車両「300系」の投入や、線路、電気設備の増強など、巨額の設備投資が必要だった。そこで「のぞみ」は全車指定席の特別な商品価値を持つ列車として、「こだま」「ひかり」より高い特別料金を設定した(東京~新大阪間で950円差)。ちなみに、東海道新幹線は1975年まで、所要時間の異なる「ひかり」と「こだま」で特急料金に差をつけていた。
「のぞみ料金」は特殊な位置づけだ。例えば、JR東日本の新幹線は、どの区間も認可対象である自由席特急料金を基本として、指定席料金を足したものが指定席特急料金だ。しかし「のぞみ」料金は全席指定席を前提に、指定席特急料金総額として認可されている。
ところが2003年に前提が大きく変わる。同年10月に行われたダイヤ改正で、1時間あたりの「のぞみ」の運転本数を3本から7本へ増発し、「のぞみ」主体のダイヤに転換したのである。
2003年9月末時点で東京~新大阪間の特急料金は「のぞみ」が6090円、「ひかり」「こだま」が5140円と、2割近く高かったため、出張で「のぞみ」の利用を認めない企業も多かった。当時、首都圏~大阪間の航空機輸送シェアが34%(2024年度は14%)と、新幹線に攻勢を仕掛けており、「のぞみ」増発もこうした動きに対抗するものだった。
特別な列車からダイヤの中心へ「のぞみ」の位置づけが変わる中、事実上の「大幅値上げ」は利用離れを招いてしまう。そこで2003年のダイヤ改正にあわせ「のぞみ料金」を引き下げ、例えば、東京~新大阪間運賃・料金は1万4720円から1万4050円(普通車指定席・通常期)に値下げし、「ひかり」との差額を970円から300円へ縮小した。
あわせて全席指定席だった「のぞみ」に自由席を3両設定した。仕組みの上では「のぞみ指定席特急料金」から「指定席料金」を差し引いたのが「のぞみ自由特急料金」になるが、そのような運用は困難だ。そこで「のぞみ」の自由席は「通常よりおトクな特定特急料金」として、「こだま」「ひかり」の自由席特急料金と同額に設定している。
のぞみ料金のイメージ図(筆者作成) 拡大画像表示







