JR東海を苦しめるインフレ
増発・新型車両への巨額投資

 話は現在に戻る。冒頭に「東京~新大阪間の特急料金は700円、新大阪~博多間は280円の値上げ」と書いたように、JR東海とJR西日本で値上げ幅は異なる。これはJR西日本が先行して、2023年4月1日に山陽新幹線区間の「のぞみ」「みずほ」の指定席特急料金を110~420円の範囲で値上げしたからだ。

 2022年7月13日のプレスリリースは値上げの理由を「コロナ禍の社会変容を踏まえ山陽新幹線のさらなるサービス改善を図るため」と記している。端的に言えば、コロナ禍による減収への対応である。

 それが今回の発表では「昨今のインフレに伴い安全性やサービスを維持・向上させるためのコストが上昇」しているとして、今後のさらなる安全性の向上やサービスの改善を進めるための値上げと説明している。

 JR東海が10月28日に発表した中間決算によると、東海道新幹線の運輸収入は前期比1.1%増の7403億円と引き続き好調だ。単体の営業収入も同1.2%の増加だが、営業費の増加により営業利益は同2.5%減の4214億円となった。営業費の細目を見ると、人件費が同5%、動力費が同11.6%、修繕費が同13%と大幅に増加している。

JR東海2026年度中間決算説明資料より抜粋JR東海2026年度中間決算説明資料より抜粋 拡大画像表示

 同社によれば、修繕費における資材価格の高騰や、べ―スアップによる人件費の増加、修繕費における労務単価の上昇、業務費における委託先の賃金引上げの委託単価への転嫁など、インフレによる費用への総合的な影響については、2026年度通期で約365億円と想定している。ただし、そのうち約190億円は、昨年12月の建設業法改正への対応の影響であり、来年度以降は発生しない費用である。

 インフレ傾向は今後、加速する見込みで、利益はじわじわと圧迫されていく。同社は「のぞみ」の運行開始後も増発、最高速度の向上、所要時間の短縮など、サービス向上のため多額の設備投資を重ねてきたが、消費税率改定を除けば1992年以降、上限料金を保っている

 例えば「のぞみ」の運転本数は、2020年3月に1時間あたり最大12本(「『のぞみ』本数2割増は本当に難題だった!ダイヤ担当者に聞く舞台裏」参照)、2026年3月に同13本(「もはや執念すら感じる…『のぞみ』最大1時間13本、“超過密ダイヤ”が実現できたワケ」参照)へ増発したが、10月28日の中間決算説明会で将来的に同14本とする計画を明らかにしている。

 また、2029年度に新型車両「S0系」を導入し、自動運転を本格的に開始する(「JR東海が新型新幹線で『栄光の0系』復活!『四角い鼻先』に隠された驚きの進化」参照)。上記記事で解説した通り、列車本数を1本増やすのは容易なことではない。これらの機能向上を料金に反映するとともに、設備投資を継続的に行っていくための原資が必要と述べている。