グリーン車は最大4510円値上げ
サービス向上前に値上げする理由

 今回、もうひとつ発表されたのが、グリーン料金の値上げだ。こちらは2027年12月15日乗車分から実施する。特急料金は最大でも880円(東京~博多間)の値上げだが、グリーン車は東京~新大阪間で3000円、東京~博多間で4510円の大幅値上げとなる。これは新幹線の特急料金が認可制なのに対し、グリーン料金は審査手続きのない届け出制だからだ。

 JR東海は10月16日の「S0系」導入にあわせて、多機能アームレスト座席、パーティション座席など新たな座席の設定、乗り心地の向上、専用待合室の設置など、グリーン車サービスの向上を「2027年12月15日以降、順次実施していく」と発表した。同社はこれらを踏まえ、「サービス全体の水準に見合った価格とするという観点等から価格を改定する」と述べる。なお、導入が進む最上級クラス「Supreme Class」関連の投資額をグリーン料金値上げによって回収する考えはないそうだ。

 とはいえ、グリーン料金の値上げは設備更新の完了を待たずに行われる。理由を同社に聞くと、「個々の列車に備わる個別設備ごとに料金を設定するものではなく、これまでのサービス向上を含めたグリーン車のサービス全体の水準を踏まえて設定するもの」と説明する。これまでのサービス改善も反映した値上げとの位置付けだ。

 鉄道に限らず、エグゼクティブ層、富裕層の購買力にあわせて上級サービスの価格を引き上げる流れが強まっている。同社の立場からは言いにくいだろうが、大衆化しすぎたグリーン車の「格」を引き上げたいとの思いもあるのではないか。実際、グリーン車を愛用する筆者の知人は、値上げによって車内環境が改善するなら歓迎すると述べていた。

 全国の消費者物価指数は2020年4月から2026年4月までに14%以上増加したが、建設資材物価指数は2015年から4~5割増加しており、装置産業である鉄道事業者の費用負担は見かけのインフレ以上に大きくなっている。

 今回の料金改定による増収額は、特急料金が年間350億~400億円、グリーン料金が年間150億~200億円、計500億~600億円を見込んでいる。JR東海の鉄道運輸収入は約1兆5853億円(2025年度)であり、増収率は最大でも4%程度に過ぎない。なお、2022年以降、行われた運賃改定は概ね10%程度の値上げである。

 4%であれ10%であれ、鉄道運賃・料金のささやかな値上げは早晩、インフレに追い抜かされる。私たちは30年にわたるデフレ時代に慣れ過ぎてしまったが、1980年代以前のように、鉄道も定期的に値上げを実施する時代が戻ってくるのだろう。その流れに置いていかれ、ジリ貧になることを、JR東海は恐れているのである。