誰がファブラボに集っているのか?
職人の町、鎌倉で生まれた化学反応

 鎌倉駅から徒歩5分。巽神社の向かいにある白い酒蔵をのぞけば、そこがファブラボ鎌倉だ。レーザーカッターや3Dプリンタ、CNCミリングマシンといったデジタル工作機械が、日本古来の建築に自然と寄り添っている。「結の蔵(ゆいのくら)」と呼ばれるこの建物は、秋田県湯沢市にあった酒蔵を移築したもので、築年数は125年を超えている。

ファブラボ鎌倉
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 ファブラボ鎌倉の施設は、毎週月曜日の午前中に開放されている。朝9時に集合し、建物のまわりで草むしり、あるいは蔵の手入れを手伝えば、市民は工作機械を自由に利用することができる

 もともと鎌倉は、漆を用いて彫刻する「鎌倉彫」や、刀鍛冶を源流とする鉄工芸をはじめ、陶芸、彫金、テキスタイル、木工といった工芸が盛んな町だ。市民といっても、一芸をもった職人も大勢いる。

ファブラボ鎌倉は、こうした職人たちと共同でイベントやワークショップを実施している。たとえば、「タラウマラ族に伝わるサンダルづくり」などだ。タラウマラ族というのは、足の速さで有名なメキシコの先住民である。彼らは靴を履かず、サンダルで100キロ以上を走り通すという。その彼らが使っている、裸足のように軽やかに走れるサンダルを、ワークショップを通じて製作するのだ。参加者は好きな本革を選び、お気に入りの鼻緒を選び、自分の足のかたちに合わせて、自分だけのサンダルをつくることができる。

レーザーカッターに出会った革職人
――〈つくり手〉がつくる楽しさを独占する時代は終わった

 ファブラボ鎌倉でこのレザーサンダルづくりのワークショップを主催しているのは、革職人の藤本直紀さんと、デザインディレクターの藤本彩さんによるユニット「クルスカ(KULUSKA)」だ。鎌倉在住の2人がファブラボ鎌倉と出会ったのは、2012年の4月。レーザーを使って素材を焼き切る「レーザーカッター」を使える施設を探していたことがきっかけだった。

 当時クルスカは、精神的なハンディキャップをもつ人々が働く施設「小規模作業所」に対し、仕事としての〈ものづくり〉を提供できないか、という企画に参加していた。その時2人が考えたのは、シンプルな革製品をつくることだった。しかし、革を直接、型紙を使いながら手で切ることは、健常者でも難しい。だがレーザーカッターであらかじめパーツを切り抜いておき、最後の接着や縫製部分を担当すれば、誰でも本格的な革製品をつくることができる

クルスカの二人。左:藤本彩さん 右:藤本直紀さん

 このプランで藤本直紀さんは、レーザー・デザイン・フォーラムの主催する「第7回レーザーコンテスト」の社会企画部門でグランプリを受賞した。