「やられたらやり返す。倍返しだ」のセリフにも
デキる上司の条件が秘められていた!
人間は専門用語で『返報性』と呼ばれる心理的性質を持っています。返報性というのは「好意的感情のバランスをとろうとする」心理作用のこと。簡単に言うと、人に何かをしてもらったら「私もお返ししなきゃ、何だか居心地が悪い」という感情が芽生えてくるということです。この返報性ですが、“贈答”という文化を持つ日本人にはとくに強く備わっている、ある種の“美徳的”性質だとも考えられます。
しかし社会的地位や権威などを手に入れると、人の返報性という心理的性質はマヒしてしまいがちです。つまり「やってもらって当然」と思うようになってしまう。上司という立場になった途端、部下は上司の命令を聞くもの、部下は上司のために働くものと思ってしまう――こうしたリーダーの下では組織は一枚岩にはなれません。
上司が率先して行動するから、部下も「オレたちも」とヤル気になります。上司が部下を庇ってくれるから、部下は「この人のために」と思うのです。
こう考えると、返報性という心理的性質は、円滑な人間関係において非常に大きな影響をもたらしていると言えるでしょう。
そして半沢直樹は、常にそうした姿勢で事にあたり、実践しています。彼に部下がついていくのは、心理学的に見ても当然のことなのです。
実際に心理学的な見地でも、「部下の心を動かすリーダーは、大きな夢と具体的な計画を語り、仕事に目的を与え、時には進んで危険を冒す人」と考えられています。
半沢は部下のために矢先に立って行動し、部下はそれを心意気に感じ、それに報いるために仕事をする。これこそが理想の組織の姿ではないでしょうか。
ドラマの決めセリフは「やられたらやり返す。倍返しだ」ですが、その裏側では「やってもらったら、恩を倍返し」という、組織や人間関係のあるべき姿が描かれています。
では、どうやったら『半沢直樹』的上司力が手に入るのか。それもメンタリズムのテクニックで解説していきましょう。