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インキュベーションの虚と実

“起業ありきで多産多死”の現状を打破する
異色メンター・小澤隆生のインキュベート法

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第34回】 2013年9月2日
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 岸田氏は無給のカバン持ちという身分で小澤氏のオフィス兼自宅に通い続けた。小澤氏がさまざまな人と重ねるミーティングにちゃっかり出席し、資料の準備などの手伝いをするといった日々が続いた。

 半年ほどして、岸田氏は起業のテーマとして「食」というジャンルが定まってきた。そこで、岸田氏は、外食店の経営を一度体験しようと、西麻布の飲食店に、これまた無給で1ヵ月間、働いた。ところが、「自分にはこれは無理だ」との結論に至り、再び小澤総研に戻った。

 そこで、小澤氏から岸田氏の人生を大きく変えるメッセージが投げられた。

 「おまえ、ウチの家の前に場所あいてるけど、弁当屋でもやんねー?」

 岸田氏はそのとき、「そうか弁当屋かと、なぜかバチっとはまった」という。小澤家周辺はランチ難民が多く、近くの弁当屋に行列ができていた。外食事業を始めるには場所・施設・人と多額の資金が必要だが、弁当屋なら小さく始められる。それに、結構売れるかもしれないと岸田氏は直感的に思った。

共に考え、悩むが
事業運営は任せる

 ネットで売る現在のビジネスモデルの原型にたどり着いたのが2008年11月。製造は外部、配送も外部、マーケティングと販売をやるネット弁当屋を考えた。ここに至るには、岸田氏が楽天で3年ほど楽天デリバリーを担当し、この分野に土地勘があったことが大きく影響している。

 ユーザーの視点で考え抜く作業を、小澤氏と2人で3ヵ月間費やした。容器、ご飯、卵焼きの量、価格、徹底的に悩み抜いた。

 たとえば価格については、小澤家のそばの弁当屋は700~800円と少し高めの値付けだった。楽天デリバリーの企業向け弁当は1000~2000円の高いゾーンの需要があった。その辺りをターゲットに、2人で議論を重ね、09年4月、いよいよテスト販売することになった。

 売上は初月75万円だったが、翌月300万円、翌々月450万円と好結果をたたき出した。試行錯誤を重ねていくうちに、多店舗、多ブランドでも事業展開は可能だと判断し、7月7日に会社を発足。そこからスターフェスティバルの快進撃が始まった。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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