マンションを購入したときは、これから始まるマンションライフに夢見心地になる。でも実際は、ペット飼育や生活音の問題など、トラブルが生じることもある。それらをどう防ぎ、どう対処すればいいのか。鍵を握るのが、個々のマンションの基本的なルールを定めた「管理規約」だ。管理規約とはどういうものなのか。明海大学不動産学部の齊藤広子教授に教えてもらった。
「区分所有法」と
「管理規約」との関係
齊藤広子 さいとう・ひろこ筑波大学第3学群社会工学類都市計画専攻卒。不動産会社勤務を経て、大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程修了。英国ケンブリッジ大学土地経済学部客員研究員を経て、現職。
居住者が気持ちよく暮らすため、そして物件価値を維持するために行う「マンション管理」は、基本的に「区分所有法」という法律に従って進められる。しかし区分所有法は、業務用のビルや倉庫などでも適用される(区分所有である場合)。
そのため、この法律では、区分所有の不動産すべてに適用できるように、所有や管理に関する最低限のルールだけが決められている。
そこで、個々のマンションで「ペットを飼ってはいけない」「住居を事務所や塾に転用してはいけない」「管理費と修繕積立金はこんなふうに負担しよう」といった個別のルールが必要になってくる。これが「管理規約」だ。
管理規約は必ず定めなくてはならないものではなく、区分所有法第3条に「定めることができる」とある。小規模なマンションでは、規約がなくても、その都度住民で話し合うことも可能だからだ。しかし実際には99%という圧倒的多数のマンションで規約が設けられている。
また、管理規約で何でも決められるわけではなく、区分所有法の規定に反する内容は無効となる。
区分所有法の規定には、①総会の決議や規約をもってしても変えることができない「強行規定」(建替えの議決要件、総会議事録の作成など)と、②「規約で別段の定めができる」とされている事項(規約共用部分、普通議決権の要件など)、そして③特に制限のない事項(管理費や修繕積立金の算定法、駐車場や集会室等の使用方法、ペット飼育の可否、リフォーム時の要件など)の三つがある。
つまり②と③については、規約で、区分所有法と別の内容を定めることができるわけだ。
なお、規約より、さらに細かなルールを定めたものに「使用細則」または「協定」がある。例えば、規約に「条件つきでペット可」とあった場合は、使用細則や協定に「小鳥と魚類のみ」とか「犬○頭、猫○匹まで」といった詳細が定められる。