自社製品も含めて「なるべく買うな」
パタゴニアが見据える断崖と解決策
近年、パタゴニアが製造販売を手がける分野は広がり、携帯しやすいオーガニック食品やパタゴニアの価値観を反映する書籍をそろえたパタゴニア・ブックスも展開しています。パタゴニアも一私企業であり、現状を維持するだけで年率3%の売上げ増が必要になるからです。にもかかわらず、パタゴニア社は顧客に対して「(パタゴニア製品も含めて)なるべく買うな」と訴え始めました。
1年前のクリスマス商戦を機に、同社は長持ちする製品をつくることを誓い、顧客にも必要なものしか買わないことを誓ってもらう取り組みを始めたのです。それは2桁の成長を続けてきた同社が偽善者ではないかと問われてもおかしくないことだったと、環境部門担当副社長のリック・リッジウェイ氏が最新製品カタログ(2013秋)に寄せた一文のなかで打ち明けています。
「もし明日の朝から本当に必要なものしか買わないことにしたら、現在のビジネスは崩壊するということも私たちは理解しています。けれども、もし現在のビジネスが私たちを断崖に導いているとしたら、どのような解決策があるでしょうか。……私たちはどうしたら持続不可能な経済を持続可能なものに方向転換できるか、またそのためにどのような生活の抜本的変化が必要であるかを吟味し、複数の寄稿者に依頼して人間と「もの」との関係、仕事との関係、食物との関係、自然との関係を再定義するテーマの記事を掲載していきます」(同カタログより)
パタゴニア社はこのキャンペーンを「レスポンシブル・エコノミー(責任ある経済)」と名付けました。断崖から落ちる結末を回避するため、パタゴニア社がなすべきことは「価値観の方向性をいかに変えるか」であり、それを追求していくことが「責任ある企業」としての最重要課題なのです。
◇今回の書籍 29/100冊目
『レスポンシブル・カンパニー』
20世紀型資本主義のほころびが目立ち始めた昨今、地球、そして世界とどのように共生していくかを真剣に考える時が来ている。自然を傷めない、新興国から搾取しない、誇りの持てる仕事をする。パタゴニア創業者が企業、そしてビジネスのこれからのありかたを説く。
イヴォン・シュイナード/ヴィンセント・スタンリー 著
井口耕二 訳
定価(税込)1,575円
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