今秋40周年を迎える米国の老舗アウトドアブランド、パタゴニア。決して妥協せず、良質な製品を作り続ける中堅企業として、日本のアウトドアファンにも人気がある。そんな同社は、米国でビジネスがもたらす環境危機にいち早く警鐘を鳴らした草分け的な存在。長年にわたってみずから環境や社会に対する責任に取り組み続けてきた。いまや世界に冠たるグローバル企業の多くが、パタゴニアの取り組みに注目し、アドバイスを求めに来るという。近い将来、企業が直面するという「持続不可能な世界」とはどんなものか。求められる「レスポンシブル・カンパニー:責任ある企業」の姿とは。創業者の甥として創業初期からパタゴニアを支えつづけてきたヴィンセント・スタンリー氏(グローバル/マーケティング担当副社長)に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン・小尾拓也、撮影/宇佐見利明)

自然がみずからを再生できなくなる?
目前に迫りつつある「持続不可能な世界」

――ヴィンセントさんは、著書『レスポンシブル・カンパニー:パタゴニアが40年かけて学んだ企業の責任とは』(ダイヤモンド社)や講演などを通じて、企業を取り巻く環境が「持続不可能な世界」に入りつつあると指摘しています。このままいくと、これまでの企業のやり方は通用しなくなり、ビジネスが立ちゆかなくなってしまうということですが、そもそも「持続不可能な世界」とはどんな世界なのか、イメージを教えてください。

ヴィンセント・スタンリー
Vincent Stanley
パタゴニア グローバル/マーケティング担当副社長。米カリフォルニア・サンタ―バーバラ在住。パタゴニアの創業者/オーナーであるイヴォン・シュイナードの甥であり、1973年以降、公私ともどもパタゴニアに携わる。近年はフットプリント・クロニクル、コモンスレッズ・パートナーシップ、パタゴニア・ブックスを立ち上げ、注力している。著書に『レスポンシブル・カンパニー パタゴニアが40年かけて学んだ企業の責任とは』(共著・ダイヤモンド社)がある。

 私が仕事をはじめた1973年当時の世界の人口は約40億人でしたが、いまでは70億人にまで増えています。それに伴い、世界経済の規模も当時と比べて5倍に膨れ上がった。さらにこれから40年以内には人口が90億人になると言われており、中国だけでも10億人が農業をはなれてグローバルな経済活動に関与すると見られています。

 こうしたなか、すべての生命体を支えている「自然」への負担圧力が非常に巨大になっています。その負担圧力は拡大していく一方で、生態系に関する指標は悪化の一途をたどっている。今後は、自然がみずからを再生できなくなる「持続不可能な世界」に入っていくでしょう。

 多くの人は、こうした危機にまだ気づいていませんが、私たち人類は現実を認識し、私たちが愛する環境を守っていかなければなりません。人は自然のなかから最も大きな満足を得られるもの。それをみずからの手で壊してはいけません。

 資源を使いたいだけ使い、自然を汚染し、地球環境に負担をかけながら拡大してきた我々のビジネスも、このままでは早晩立ちゆかなくなる。ビジネスに関わる人びとは、環境に負荷をかけるやり方を変えなくてはいけません。