上司と若手のスレ違いは、「仕事」と「生活」に対する考え方だけにとどまりません。若手と接する機会の多い人はお気づきかもしれませんが、最近の若手の口グセの1つに「成長したい」というフレーズがあります。

 「成長」は「自己実現」と並び、今の若手が仕事に求める2大テーマともいえます。ただし、この「成長」という言葉の解釈自体が、上司世代と今の若手ではずいぶん異なります。

成果主義に順応しようと焦る若手

 成長したいという部下の思いを汲んで上司は、企画書の清書を命じたり、資料の整理をさせたりと、基礎的な力をつけさせようとします。しかし、「こんな雑務ばかりじゃ、いつまでたっても成長できない」と不平不満を漏らす若手が多いのです。

 上司からすれば、「それで本当にやる気があるといえるのか!?」と、若手の成長願望に疑問を投げ掛けたくなるのも無理はありません。

 年功制だった上司の若手時代は、敷かれたレールの上を歩いていけば、ある程度の出世が約束されていました。そのため、上司世代にとっての「成長」とは、まずは目の前の仕事をマスターし、組織に迷惑をかけないようになること。そして、上司や会社の覚えを良くすることでした。

 その際に自分の成長を感じるのは、おもに「報告書を書く時間が以前より5分短縮した」「先輩のプレゼンテーションの下準備を手伝った」など地味な仕事でした。「こうした仕事をきちんとこなしていけば先輩のようになれる」というキャリアプランの見通しもあり、「くだらない仕事」とクサるようなことは少なかったのです。

 では、今の若手はどうでしょうか。彼らは、成果主義に順応しようと必死に「結果」を出そうとします。しかし、まだ社会に飛び出したばかりの若手は、雑誌で見た年収ウン億円の若手ベンチャー起業家、テレビで見たヒット商品の開発者らのような、華々しい活躍ぶりを「結果」だと思い込むことすらあります。

 周りに年の近い先輩もおらず、人事制度も複雑化していて、将来どうなっていくのかキャリアプランもはっきりしない現状が若手の誤解に拍車をかけています。