今年6月にアクセンチュア経営コンサルティング本部アクセンチュア アナリティクス(部門名)を立ち上げその統括に就任しました。この準備で前回掲載からしばらく時間が取れず、更新が滞りましたことをお詫びいたします。
今回はデータサイエンスにおいて見落とされがちな2つの側面についてお話ししたいと思います。一つ目が組織戦略面であり、もう一つが運用面で、最適化が最終消費者の目線で、社会的に良いことのために設計されているか否かについてです。
データサイエンスは、意思決定支援のプロセスであり、
決定そのものを下す訳ではない
組織戦略というものは複雑な要素が絡み合って議論されるべき非常に大切な論点です。というのも本来企業戦略は机上の空論ではなく、実現可能性も合わせて評価されるべき取り組みであるべきだからです。特に選択と集中の戦略の根幹をなす企画部分、実現すべき最適化プロセスにおいて果実を摘み取る部分は最も重要です。
にもかかわらず、なぜかデータ分析の世界ではその分析自体から2つが切り離されて議論されていることが非常に多いのが現状です。そのため人材が育っていなかったり、プロセス自体が埋め込まれていなかったりして、金や時間をかけているのに自己満足な結果に終始していたりといった問題を感じられているのではないでしょうか。
データサイエンスのコラムですが、データを分析する側、あるいは分析する部署を率いる部門長のみならず、それを支援している経営幹部の方々へ向けた視点も含めて説明したいと思います。
分析プロジェクトには、目的が必要だということは、これまでにも本連載で何度か掲載しているところです。有人飛行で月面着陸を狙うのか、無人の衛星を単に衛星軌道に飛ばすのか、概念的には同じ宇宙へ向けたロケットの打ち上げでも、目的によってそこに必要となる技術や投入リソース、準備に要する難易度は全く違うものになります。
そこで再認識すべきは、データサイエンスは、意思決定のための支援プロセスであり、決定そのものを下す訳ではないということです。
有人飛行か無人飛行かを決めるのは、他でもない人間です。経営戦略において、古くから言われている選択と集中の視点が必要なのです。
私は今、企業幹部向けのみならず、慶應義塾大学において、データサイエンスの講義を担当させて頂いています。各分野で日本を代表する先生方を代表委員とした日本初のカリキュラムとして、しかも日本の最高学府の一つである高等教育機関において、若い世代を育成する機会を頂けたことはこの上なく光栄なことです。
このカリキュラムでは、頻度論、ベイズ統計、超並列分散処理や大規模処理基盤、機械学習や情報処理概論等の当該分野の専門知識に加え、私としては企業戦略論を徹底して教えるべきだと提言申し上げ、取り入れていただきました。つまるところ、月面に行く目的を企画できる人間が、分析プロジェクトを指揮するべきなのです。そこには複雑な要素を考慮したミッションを完遂させるごとく骨の折れる作業になりますが、屋台骨無くして実のある成果は摘み取れません。現実の企業戦略への最適な導入への施策を、オーダー・オブ・マグニチュード(規模の度合い)や構造化を通じて徹底的に考える訓練を行うべきだと考えています。