ミャンマーの経済改革が進み、海外からの資金が多く流入してくるなかで、いまだ国内最大の課題の一つとして挙げられる分野に医療がある。

 現地における医療制度は未成熟で、特に山間部等の地方では満足な医療を受けられない人も多い。地方のみならず、ヤンゴンなどの都市部においても、病院の医療水準はとても充実しているとは言い難く、現地駐在員は、今でも大きな病気になるとバンコクに行くことが多い。一方で、そのような状況は、企業の進出の観点からは、現地で大きく貢献する余地があることも意味する。

 はたして、そもそも現在のミャンマーの医療関連の状況はどのようになっているのだろうか。また、その改善に向けて、政府はどのような体制で取り組んでいるのだろうか。今回は、ミャンマー医療の概況についてご説明する。

医療機器も設備も古い
経済改革の恩恵は来ず

 まず、ミャンマーの医療機関の最前線の様子を紹介しよう。

 ヤンゴンのなかでも比較的施設が整っていると言われるShwe Gon Dine病院。一歩中に入ると、待合室は患者でいっぱいだ。せわしなく動き回る看護師たち。建物もそうだが、医療機器や設備も、古いものを大事に使ってきたことがわかる。

医者は薄給で副業と“稼げる処置”に関心 <br />看護師・物資も枯渇するミャンマー医療現場Shwe Gon Dine病院待合室風景
Photo:アジア戦略アドバイザリー

 案内してくれた看護師に、現場で働いていて大変なことは何かと聞いてみた。

「とにかく看護師の数が少ないことです。患者の数と比較して、まだまだ全然足りません。ミャンマーの医療機関では、足りないものがいっぱいあります。また、できればより品質の良い日本製の医療機器を使えればと思っています」

 また、病院幹部は医療の現状をこう話す。

 「ミャンマーでは色々な改革が始まったが、まだその恩恵は医療現場までは来ていない。政府予算が限られている中では、どうしても後回しになってしまう。日本製の医療機器は、非常に優れていてミャンマーでも人気だ。出来ればうちが、ミャンマーでの代理店になりたい。日本企業側にその意向を伝えることは出来るか?」

 インタビューの場で筆者にこんなビジネスのネタを振ってくるほど、現場でのビジネスマインドは強いということか。