ペペロンチーノ、カルボナーラ、ボロネーゼにトマトクリームパスタ…。思えばパスタの種類も増えたものだ。一昔前にスパゲッティ(パスタではなく)を食べるのは喫茶店、しかもメニューはミートソースかナポリタンというのが定番だった。
そのナポリタンが昨年末ごろからちょっとしたブームとなっている。口のまわりを真っ赤にして食べるのがよく似合う、どこか懐かしいナポリタンのどこに魅力があるのだろうか。
ウィンナー、ピーマン、玉ねぎを具材に、味付けはトマトケチャップというシンプルな洋食メニュー、ナポリタン。諸説ある誕生秘話のうち、もっとも有力とされるのが、戦後の進駐軍が食べているメニューからヒントを得て、ホテルニューグランド(神奈川県横浜市)の総料理長が考案したという説だ。
その後、口コミでナポリタンの魅力が広まり、西欧文化の入り口である横浜を発祥の地としてナポリタンを出す飲食店が急増した。さらには調理のしやすさ、ケチャップ味の親しみやすさから、家庭や学校給食、喫茶店にも広く浸透したのだ。
そうして20世紀の終わりごろ、“イタメシブーム”の到来によって冒頭のようないわゆる本格パスタが人気を博した結果、庶民派の代表ナポリタンは徐々に姿を消していったかにみえた。
だがナポリタンはしぶとく生き残っていた。いまだにメニューに掲げている喫茶店もあれば、「懐かしの昭和メニュー」として、「鉄板に盛って提供される熱々メニュー」として、トマトに含まれる「リコピンが持つ作用」が注目を浴びて…。定期的に話題となるのは、ナポリタン体験を濃い記憶として持っている、根強いファンがいるからこそだろう。
ナポリタン専門チェーンも
拡大のきざし
こうして息の長いメニューであり続けるナポリタンを、細く長く消費者に愛される商材を求める飲食業界が見逃すはずがない。
B級グルメ研究所が運営するナポリタン専門店「パンチョ」は都内の主要駅に6店舗を展開。東京チカラめしや東方見聞録などを展開する大手外食チェーン三光マーケティングフーズも、「東京スパゲッチ」というナポリタン専門店を高田馬場駅近くに出店している。
また、11月2日(土)から4日(月・祝)の期間、横浜赤レンガ倉庫で行われる『全国ふるさとフェア2013』では、No.1ナポリタンを決定する「ナポリタンスタジアム」(カゴメ主催)が初開催される。全国の有名ナポリタン16品が集結し、来場者の投票とWeb投票によってキング・オブ・ナポリタンが決定される。
ナポリタン発祥の地とされる横浜で、こうしたイベントが開かれることが、いま一度広い世代にナポリタンの魅力を訴求するきっかけとなる。ナポリタンの魅力や新たな楽しみ方が世代を越えて広がり、次の世代に自然と受け継がれていく──ナポリタンにはそんな魅力が備わっている。
(筒井健二/5時から作家塾(R))