第18期三中全会(中央委員会第三回全体会議)の翌週に北京を訪れたところ、政府関係者、政治ウオッチャー、金融市場関係者の間に高揚感が漂っていた。

 日本のメディアの多くは三中全会を冷ややかに報じていたが、欧州のメディア(特に英国)は高く評価していた。現地に行ってみると後者と同様の「ここまで具体的に踏み込んだか」という驚きの声が多く聞かれた。ある市場関係者は、「今回の改革が実行されるならば、それは、1978年の改革開放路線、92年の社会主義市場経済の提唱、2001年のWTO加盟に匹敵する第4の改革となり、かなりの経済効果を生み出す可能性がある」と分析していた。

 改革派の政府関係者も「効果が表れるのに時間はかかるが、WTO加盟よりも今回の改革は深く長い効果をもたらすだろう」と話していた。最大のポイントは、改革の対象が経済だけでなく、政治・文化・社会・環境を含め「全面的」なものとなる点にある。しかし、それはそうしないことには解決できない深刻な矛盾が至る所に噴出しているということでもある。

 例えばシャドーバンキングの問題を見てみよう。その資金流入先である地方政府の投資プラットフォームを整理していくには、中央政府と地方政府の税収の配分を変革しなければならない。歳入が少ない地方政府が多いからこそ、彼らの一部は危うい投資を行ってきた。また、預金金利自由化が遅かったために、シャドーバンキングの代表的運用商品である理財商品の人気が高まってきた面もある。三中全会は、預金金利自由化の前提となる預金保険制度の整備を「加速」させる方針を示した。