現地時間の17日、米景気対策法案が成立し、昨年の秋以来、世界中の期待を集めてきたオバマ米政権の経済・金融対策の2つが出揃った。

 だが、期待の星だったはずの2つの政策に、米国の株式市場はノーを突き付けた。ニューヨーク市場のダウ平均(工業株30種平均)は、ガイトナー財務長官が金融対策を発表した今月10日に、前日比381ドル99セントの大幅安を記録。続いて、オバマ大統領が景気対策法案に署名した17日も、同297ドル81セント安となったのだ。

 市場が、オバマ政権の経済・金融対策について、規模が不十分で力不足と判断したことは明らかだ。だが、それだけとは言えない。

 むしろ、これほどの下げを伴う失望売りは、今回の経済危機を短期間に克服する経済政策を策定できる政府は世界のどこにもないという懸念を、市場が現実として確認したと読み解くべきではないだろうか。

景気・金融ともに
投入金額が足りない

 350万人の雇用創出を狙う総額7870億ドルの景気対策法と、最大2兆ドルの不良債権買い取りなどを柱に金融危機の一掃を狙う金融安定化策――。

 この2つこそ、昨年11月の大統領選挙で当選を果たしたオバマ政権に期待して、世界が固唾を飲んで見守ってきた施策だ。2007年8月のBNPパリバグループの系列3ファンドの換金停止措置の発表以来、次々と危機が表面化してきたにもかかわらず、早くからレームダック化していたブッシュ前政権が決め手となる対策を講じられなかったからである。

 いきなり訪れた鼎の軽重を問われる事態に、オバマ政権は精一杯、真摯に取り組んだと言ってよいだろう。

 通常ならば、米国の政権は、新大統領の就任から100日間、内部で、あれこれ戦略を組み立てるだけ。実際の行動にはほとんど移らないのが慣例だ。議会もメディアも「ハネムーン期間」といい、その間は、政権をせかさない。

 ところが、オバマ政権は発足直後から、一刻も早く、有効な経済・金融対策を打ち出そうと全力疾走をみせた。伝統的に「小さな政府」を標榜、今回もビジネス社会への公金投入を阻止しようと動く議会共和党や、破格の報酬を受けていた経営陣の経営責任をロクに追及せずに金融機関救済に踏み切ることに対し庶民が猛反発していることを抑え込んで、政権発足から1ヵ月も経たない段階で、2つの施策の実現に漕ぎ着けたのだ。

 だが、そんな2つの施策には、共通の欠点がある。効果を期待するには、そろって投入する金額が少な過ぎるという点だ。