Profit vs Income vs Margin vs Earnings vs Return
どれも日本語では「利益」と訳しますが、どう使い分ければいいのでしょうか。横軸にギスギス度合い(言葉の響き)の強弱を、縦軸にがんばり度合い(気持ち)の強弱を取って、整理してみることにしましょう。
図の右上のProfitは、5つの「利益」の中で、もっともギスギスした響きを持つ言葉です。ズバリ「儲け」という日本語がピッタリくる単語です。自らがんばって獲得したのだという主張も感じさせるので、右上に位置しています。
Profitに比べると、左上のEarningsは「Earn=(ある対価として)獲得する」ことに重点を置くため、ギスギスした響きはありません。
左下のIncomeはEarningsと比べて、「所得」という日本語がしっくりくるような、とてもニュートラルな言葉です。ギスギスした響きや自らがんばって獲得したのだというニュアンスも少ない単語です。
中央下のMarginは、元々は「余白」という意味があり、利益として取れる余白の部分なので、Incomeに比べると少しギスギスした印象を与えます。自らがんばって獲得したというニュアンスはありません。
中央のReturnは戻ってくるもの、つまり「見返り」ですが、「がんばった成果」という意味も少し感じさせます。
ProfitとIncomeは、PL上でも、おおむね同じような頻度で現れます。たとえば、PL上で最初の利益となる売上総利益は、Gross income、Gross profitどちらも同じ意味でOKです。MarginやEarningsも時折、PL上の「利益」として現れることがありますが、Gross marginというと売上総利益率(%)と考える人も多いです。
Earningsがもっともよく使われるのは、EPS(Earnings Per Share、1株当たり純利益)を語るときです。Earningsはいつも複数形で使われるので注意してください。海外では、EPSがPL上に記載されますが、日本では注記の情報の1つです。株主重視の経営が浸透した米国企業では、決算発表の場でEPSの動きに数多く言及します。このため、決算発表では利益を語るときにEarningsという単語をそのまま使う傾向が多く見られます。図に示したように、Earningsはギスギス度合いが弱いものの、自らががんばって獲得したのだという意味の強い言葉なので、株主にアピールするうえでも、使いやすい単語なのでしょう。
Returnは、PL上に直接現れることは通常ありません。ROA(Return on Assets、総資産利益率)、ROE(Return on Equity、株主資本利益率)、ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)などの利益率を表現する際に、もっともひんぱんに使われる「利益」です。また、Returns to stockholders(株主への利益還元)のように、配当や自社株買いなどの「利益還元」を表現するうえでも多用されます。