2012年に米グッドマン・グローバル社を買収したことにより、世界一の空調機器メーカーとなったダイキン工業。だが、トップ企業になったことで、今度はオープン・イノベーションが全社的な課題となってきた。その根底にある切実感に迫る。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

 新大阪駅の北東に位置する吹田駅から、阪急バスに揺られて20分ほどで、ダイキン工業の淀川製作所に着く。正門を入ってすぐ左手に見えるのが、2015年11月の竣工を目指して急ピッチで建設工事が進められている「テクノロジー・イノベーションセンター」(TIC)だ。

 約350億円を投じるTICは、今や世界一の空調機器メーカーとなったダイキン工業の将来を占う巨大研究施設であり、単に新しく研究所を立ち上げるという以上の“重責”を担わされている。

 まず、社内に約1600人いる研究者や技術者を段階的にTICに集約する。これまで、空調機器、フッ素化学、油圧機器、特殊機械(防衛)と四つの事業部門を抱える淀川製作所、業務用エアコン部門の堺製作所、家庭用ルームエアコン部門の滋賀製作所は、相互の交流がほとんどなかった。だが、これからは、異なる分野の専門家を同じフロアに放り込むことで、半ば強制的に、建設的なコンフリクト(衝突)を起こさせる。

 次に、ダイキン工業が手がける事業領域に関係なく、世界中からさまざまな専門家たちが集まれる快適な研究・開発センターとしての機能を整える。実験設備や宿泊設備も完備し、多様な人材が自由闊達に議論できるようにする。

 自らも研究者出身であり、数年越しでプロジェクトに取り組んできた河原克己TIC設立準備室長は、「全世界に向けた新しい技術・新しい価値を創造する場にしたい」と身を乗り出して熱く語る。