1月12日以降、非鉄金属業界では、困惑顔が収まらない。インドネシア政府が、「新鉱物・石炭鉱業法」(新鉱業法)に基づき、未加工のニッケル鉱石などの禁輸に踏み切ったのだ。

 インドネシアは、ニッケル鉱石では新興国だが、今では生産量で世界の1~2位を争うほどに勢いがあり、日本にとっては約40%を占める最大の輸入先でもある。

 新鉱業法は、インドネシアで採掘されたニッケル鉱石などを自国内の生産設備で製錬・加工することを義務づけるもので、背景には“資源ナショナリズム”がある。

 実は、この動きは2009年1月にインドネシアで新鉱業法が発令されて以来の流れであり、今年になってから突然出てきたものではない。09年当時は、詳細な内容が明かされず、これといったアクションもなかったことから、日本の非鉄金属業界でも「本当にやるのかね?」と半信半疑だった。

 再び動きだしたのは、12年2月だった。「3カ月後に銅やニッケルの原料となる鉱石に関税をかける」という大臣令が出されて、実際に規制をかけたのだ。5月以降は、「新しくかけられた関税などの手続き上の混乱により、約1カ月間、鉱石の輸入がストップしたことがあった」(大平洋金属)。

 その2年後、インドネシアは、さらに歩を進めた。今回は、外国企業の懸念をよそに、本当に禁輸を断行したことから、「現在は鉱石を積み込んだ外国の大型貨物船が港から出ることができない状況にある」(住友金属鉱山)。

困るのはインドネシア

 過去数年、インドネシアは採掘したニッケル鉱石などを大量購入する外国企業に対し、資源ナショナリズムという“切り札”をチラつかせながら、自国内に生産工場を誘致すべく圧力をかけていた。

 一方で、最大の顧客である日本政府は、規制強化の動きを見直すよう官民を挙げて働きかけてきたが、インドネシア国内での不満は高まっていくばかりだった。