◇「希望の仕事に就けないこともあります…」
 現実的な話をしておくことの大切さ

 筆者は役職定年者や退職予定者向けの研修に立ち会うことも多い。そこでの説明として、退職金・年金等のライフプランは比較的うまく説明できている。だが、役定後から定年までどんな働き方になるのか、また定年後はどんな職場や働き方になるのか、賃金や評価がどうなるのか、具体性の乏しい説明が多いように感じる。まだ先のことなので、あまり給与や待遇変化のことを言って気落ちしては困るからだろうか。

 しいて言えば、「65歳までの雇用を考えたとき、わが社で皆さんにお願いしたい仕事と待遇はこのようなものです。必ずしも希望の仕事に就けるとは限りません。仕事は…、責任は…、給与は…、経験や専門知識の活用は…このようになります」、「したがって、残る期間のうちに、再度現場で通用する知識やスキルの点検と新しい職場でやっていける適応性を身につけておいてください」という説明が必要だと感じる。

 また、社内仕事では自分の専門性や経験が十分活かされない、給与が合わないという方には、社外でそれを実現する道を探してもらうことも付加しておくべきだろう。

◇50代シニアには、社内の“引っ張りだこ人材”になってほしい

 冒頭ご紹介した筆者の参加している研究会の中で、ある人事担当者が説明の中で、神社の縁起担ぎのたこの写真を紹介した。「たこ?なんだろう?」と聞いていたら、役定等で次の職場を探しているシニアが引っ張りだこになってくれたら、というのが話のオチだった。社内で色々仕事を探し出し、本人に納得してもらっても、そのシニアを受け入れる職場があの人じゃあね……では困ってしまう。

 再雇用とはいっても、それは新しい仕事や職場に入るシニアにとっては「新たな就職」であり、また彼を受け入れる職場は「年配の新人」を迎えることに変わりはない。少々、課題の残るシニアを“引っ張りだこ人材”にするのもまた、人事担当者の大切な役割だということをあらためて悟ったような次第であった。

 今回は、高年法を意識した社内の再雇用のあり方を職務開発の視点と関連付けて説明した。シニアの再雇用は大事だが、やはり経営に対する生産性や人材活用に資する雇用を生み出していくことが大切である。シニアを雇用弱者のように扱い、無理な職務開発や社内雇用で、企業収益を圧迫するようなやり方は避けていきたい。

 次回第10回は、シニア個人に視点を移し、活用課題である現役能力の維持と、役割変化に応じた能力をいかに作り変えていくかを考えたい。