世界的に爆発的な広がりを見せる糖尿病への対応は、いまや国際社会共通の緊急課題となっている。
国連では2006年12月に、国際糖尿病連合(IDF)の要請を受け、「糖尿病の全世界的脅威を認知する決議」を全会一致で採択。このとき、11月14日が「世界糖尿病デー」と定められ、糖尿病の予防・治療・療養へ向けて世界的取り組みが走り出した。
世界糖尿病デーに合わせた啓発イベントの一環として、東京タワーをはじめ、世界各地、日本各地で、多くのランドマークがシンボルカラーのブルーに染まった。
日本糖尿病学会理事で、世界糖尿病デーの実行委員長を務める清野裕・関西電力病院院長は、この国際的キャンペーンの意義について、次のように語る。
「現在、世界では糖尿病の合併症などで10秒に1人、年間380万人以上が死亡しています。IDFでは、世界の糖尿病人口は10年に2億8000万人、30年には4億4000万人に増えると予測しています。このまま放置すると、患者のQOL低下はもちろん、人類が背負う社会的コストは膨大なものになります。この危機的状況を打開するには、国際社会が団結して、糖尿病教育や医療体制の整備に取り組むことが必要です」
日本においても、厚生労働省「2007年国民健康・栄養調査」を見ると、予備軍を含めた糖尿病患者数は総人口の17%超の2210万人。特に生活習慣が影響する2型糖尿病が増えており、一刻の猶予もない事態を迎えている(下の棒グラフ参照)。
増加の一途をたどる糖尿病医療費
一方、医療経済の観点からいっても、糖尿病の増加は、逼迫する医療財政をさらに悪化させかねない要因になっている。07年度の日本の一般診療医療費は約25兆6418億円だが、このうち糖尿病医療費は、1兆1471億円に達している。医療経済研究機構主席研究員の満武巨裕氏は、こう指摘する。