STAP細胞をめぐる小保方晴子さんへのバッシング報道は、止まることを知らない。今やSTAP細胞の存在自体に疑義が呈されているが、目下小保方さんが真に問われるべきは、故意にせよ過失にせよ、データや文章の「コピペ」「流用」「不適切な加工」などを行ってしまったことのモラルについてだろう。こうした資料やレポートの作成に対する法的、倫理的感覚の欠如は、何も学生や研究者に限ったことではない。ビジネスマンにとっても、他人事ではないはずだ。学者の論文とビジネス文書とでは製作過程も性質も違うが、「人に自分の考えを正しい方法でアピールし、認めてもらう」というコンセプトは同じだ。STAP細胞騒動を教訓にして、新人や若手社員をはじめ、ベテラン社員もいま一度文書のつくり方を学び直してみたらどうだろうか。「コピペ」に頼らず、自分のビジネススキルを最大限に活かすための「安全で刺さるビジネス文書」のつくり方をお伝えしよう。(取材・文/高橋大樹、編集協力/プレスラボ)

「コピペ」「流用」「不適切な加工」
小保方さんが真に問われるべき責任

 いったいなぜ、こんな事態に陥ってしまったのか――。

 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター 細胞リプログラミング研究ユニットで、研究ユニットリーダーを務める小保方晴子さんが、全ての生体組織と胎盤組織に分化できる多様性を持った万能細胞「STAP細胞」の存在を発表したのは、今年1月のこと。世界的な大発見とあって注目度は大きく、報道が過熱。「割烹着」「女子力」「リケジョ」など、研究成果と直接関係のない分野にまで話題は広がり、「オボちゃんフィーバー」が巻き起こった。

 ところが2月から3月にかけて、状況は一変。英国の科学誌『ネイチャー』に掲載されたSTAP細胞の論文に関して、ネット上での検証を皮切りに、複数の疑惑が発覚したのだ。一部の画像については不適切な加工や、STAP細胞とは関係のない小保方さん自身の博士論文からの流用が、また一部の文章については他者の論文からのコピペ(コピー&ペースト)が指摘されている。

 さらに、この騒動に乗じて持ち上がったのが、かつて小保方さんが執筆した博士論文の内容の一部が、他の文章からコピペされていたのではないかという疑惑だ。冒頭部分の約20ページが、アメリカ国立衛生研究所(NIH)サイト上にある文章と類似していることが指摘された。

 これらの疑惑が広まり始めると、報道は一気に小保方さんバッシングへと傾いた。説明を求められた理化学研究所の調査委員会は、3月末に発表した報告書で「小保方さんによる不正行があった」と指摘したが、小保方さんは代理人弁護士を通じて「承服できない」とこれに反論している。