ここ最近あまり聞かなくなっていた「エコポイント」が、再び脚光を浴びました。しかし、それは「経済産業省と総務省が、来年度予算の概算要求にエコポイントの延長を盛り込まない」との話題であり、今年の5月に世間の期待と注目を集め、鳴り物入りで制度が導入されたのとは、わずか半年足らずの間に隔世の感があります。
10月14日の日本経済新聞朝刊記事によれば、10月8日現在、約3000億円の予算規模に対して、実際に商品に交換された金額は、約246億円(8.2%)にとどまっているとのことです。来年3月までに購入した省エネ家電が対象で、ポイント登録の申請は翌4月まで、そして商品の交換は2012年3月まで可能とのことですから、現時点の数値で政策の善し悪しを判断することはできないかも知れません。
しかし、現時点での実績から判断すれば、来年度予算の概算要求に、エコポントの延長を盛り込まないという経済産業省、総務省の判断も頷けます。こうした中、環境省だけは、他省庁がやらなくても、対象の家電を増やしエコポイントを継続したい意向のようです。
「大義名分」で作られた
制度設計の落とし穴
そもそも、この制度は、「エコ」と謳ってはいるものの、各省庁の思惑の違いのもとに成り立っていることは、ここで述べるまでもないと思います。下の図のように、エコポイントとは、三省の政策意図が、“大義名分”で交わった部分で成り立っている制度であるが故に、経済産業省、総務省とも本質的な政策部分での効果が薄いと判断すれば、制度自体を見直すことは、当然の判断だと思います。
【エコポイント制度の合意形成】 |
(C)Kenichiro Miyama |
このエコポイント制度は、社会の新しい仕組みづくりを考える際に陥りがちな、いくつかの象徴的な問題を露呈していると思います。
民間のポイント制度は、われわれの生活でも身近なものです。私も、家電量販店で買い物をした際、ポイントをつけてもらうと、後日買い物をする際に、値引きをしてもらえることから、ポイントカードを重用しています。そもそも、店舗側が、ポイントカードを導入する理由とは、
(1)顧客の囲い込み(常連客、リピーターの確保)
(2)顧客データの収集(マーケティングに活用)
(3)値引きの先送り(「塵も積もれば的」な金融機能)
があげられると思います。(1)(2)は、一般的に理解されやすい話ですが、(3)は、馴染みがないかも知れません。簡単に述べると、「今、値引きをするとその分の売上(収入)は減るので、ポイントというかたちで、後日値引きする約束する。そうすれば、値引き相当額のお金を店舗側は、(顧客から)一旦預かるかたちとなり、一部は資金繰りにも使える。また、1件ごとの値引き額は小さくても、それが集まれば、相当な金額になる」という話です。これらのことが、店舗側が、ポイント制度を導入する本質的な意味なのです。