顧客は無意識にウソをつく
深層心理と「ホンネ」を探るべき
定期的にアンケート調査を行い、自社の購買データも徹底的に分析している。それなのになぜかヒット商品が生まれない。結局、ヒット商品はセンスがないと生まれないのか? 商品開発の現場ではこんな悩みを持つ担当者が最近多くなっている。さて本当にそうなのだろうか?
データ分析に基づく商品開発がダメかと言うとそんなことはない。もちろん有益な情報を集め、議論と試作を繰り返しヒット商品が生み出されたケースも多い。
しかし、データに基づいた商品開発には二つの欠点がある。
一つは、「消費者は自分の理解していることしか答えられない」ということである。
例えば、20代女性が、ある日大手衣料品店(仮にAブランドとする)に行き、もともとは何も買う予定はなかったが、結果的にトップス1枚、パンツ2枚、インナーウェアを3枚買った。「なぜ、それらの商品を買ったのですか?」と聞くと、「デザインもかわいかったし、値段も手頃だったから」と答えた。本人はあまり深く考えずふらっと入って、何となく買ったのだが、それでも、「デザインの良さ」「値段」に一票が入ってしまう。
二つ目は「消費者の建前しかデータに落ちてこない」ということである。
先ほどの20代女性は「このAブランド、メインのアウターは着ているのがバレると恥ずかしいけど、今持っている他のおしゃれブランドと組み合わせるとAブランドってわからないから買ってもいいな。他のブランドも見てみたいけど、面倒だからここで買ってしまおう、まあまあ有名だし」。実はこんなことを考えていたかもしれない。
しかし、後日アンケートをした時に「価格が安いから」「品質が良いから」「デザインが良いから」などの項目にチェックを入れてしまう。本当はその時考えていたことと違うのに、選択肢にその時の心情がないので、ありきたりな回答になってしまう。
ブランドAの競合が上記のようなリサーチを行い「よし!価格をAと同じくして、デザイン、品質も向上させよう!」と商品開発をしたものの、なぜか売れない。「なぜ消費者の声を聞いているのに売れないのだろうか? 結局センスがなければダメなのか?」と頭を悩ませているのである。