もともとの地元の住民に芸術家、パーマカルチャーの人達やシュタイナーの父兄や関係者などが加わり、藤野は多彩な人材が集まるまちになった。それだけではなく、様々なコラボレーションが生まれており、賑やかで生き生きとした地域になっている。

持続可能な生き方を目指す活動も開花
人の多様性と真剣な取り組みが結果を生む

 例えば、2009年に誕生した「トランジション藤野」である。これは、大量消費型の社会システムから、持続可能な生き方に移行(トランジット)していこうというイギリスで始まった草の根的な住民活動だ。日本では藤野が第一号で、現在、国内で活動している地域は50ほど。NPO法人トランジション・ジャパン」が各地域の活動をサポートしている。

 トランジション藤野はいろんな部会の集合体で、上意下達のピラミッド型の組織ではない。各人が各々、興味あるテーマごとに楽しく活動するものだ。現在は「地域通貨よろづ屋」(登録者約300人)や住民による森づくり(皮むき間伐)を行う「森部」、「お百姓クラブ」や「藤野電力」など7つのグループがある。いずれの部会も興味深い活動をしているが、そのなかでも注目したいのが、「藤野電力」だ。

「藤野電力」は、自然や里山の資源を見直し、自立分散型の自然エネルギーを地域で取り組む活動をしている。具体的には、再生可能な自家発電装置の組み立てのワ―クショップを全国各地で開催するなど、実践的な取り組みを行っている。

 トランジション藤野の中心メンバーである榎本英剛さんは、「(トランジションは)ノーではなく、イエスのものを提案し、実践する活動です。「脱依存」「創造力」そして「再生力」というキ―ワードが3つあります。自分たちではどうにもできないではなく、何とかできるんだという達成感がトランジションの肝です。今、最も活用されていない再生可能エネルギーは個々の人間が持っている力だと思います」と語る。

 藤野は豊かな自然と人材、そして芸術や文化風土がうまく融合している。長年、地域の調整役として奔走している中村賢一さんは「(経済成長・開発路線を志向する)地元の人と移ってきた人との間に軋轢が全くない訳ではありません。でも、むしろ、軋轢があることの方が大事だと思います。双方の考え方が地域にあることは多様性の現れでもあるわけですから」と語る。

 一方、移住して20年近くなるPCCLの設楽代表は「気がついたら、藤野はエコビレッジになりつつある。でも、これは誰かが頑張って意図的に築き上げたというのではなく、いろんなものが重なって結果的にそうなりつつあるのだと思う。一人ひとりが皆、真剣に取り組んでいることの結果だと思う」と、語る。