書斎で耳を澄ますと、聞こえてくる。
カゴ一杯の泣き声

 書斎の外は歩道付きの道路です。そこは、近くの保育園の「お散歩」コースにもなっていて、元気な保育士さんたちの声が、毎日響いています。「お散歩」といっても、歩いているのは半分くらいで、その子たちはロープをつかんで列から離れないようにトコトコトコトコ。残りの半分は1~2歳児たちで、6~8人ずつくらいがカゴに入れられて、転がされていきます。外気や陽に当たるのは、大切ですもんね。

 4月初めのある日、幼児たちの大きな泣き声が、外から聞こえてきました。しかも何人も同時に。

 2階の窓から覗いてみると、いつもの「お散歩」姿でしたが、カゴの中の子どもたちが、泣いていたのです。しかも、みんな。

 一瞬、何が起きたのかわかりませんでしたが、すぐ理解しました。「ああ、新学期だった」と。

 泣いていたのは、4月から保育園に入った子どもたちでした。まだまだお母さんたちが恋しいのです。きっと朝から泣いていた子もいたでしょう。そして、泣き声は伝染します。カゴ一杯のかわいい泣き声は、しばらく続くでしょう。

 でもそれも1ヵ月の話。カゴ一杯のかわいい泣き声は、4月、新年度の音なのです。

鳥の鳴き声も、4月に増える?

 鳥の声も、そうです。自宅の小さな坪庭には高さ10mのカツラの木もありますが、お隣が緑の多い大きなお寺さんなので鳥が多く、オナガやメジロの鳴き声が、4月になると急に聞こえはじめます。

 ウグイスは年中鳴いていますが、初春から晩秋の繁殖期に「ホーホケキョ」と鳴き、春告げ鳥とも呼ばれます。

 気象庁の「うぐいすの初鳴日」観察によれば、それは九州から関東までの西日本では3月初、北陸から東北では4月以降となっています。だから新学期の音、と言えるのは北日本だけということになりますが…。

 ただ私がウグイスも「4月の音」と感じるのは、その頃から「部屋の窓を開ける」からかもしれません。冬から初春にかけて締め切っていた部屋の窓を、気温が20℃も超えると、開けておくことが多くなります。

 そうすると急に、外の音が部屋の中になだれ込んでくるわけです。

 春、部屋に「音」が急に増えるのは、ただそれだけのことかもしれません。みなさん、窓を開けましょう!