普及しなかったのは
日本の“性善説”が原因?!

――しかし、これほど簡単でフレキシビリティのある、高度な識別技術なのに、なぜ今まで普及しなかったのでしょうか。

 本人を識別する方法は、伝統的に使われていたのが指紋です。歴史は120年くらいあると言われています。特にアメリカのCIAやFBIは、個人を識別するのにずっと指紋を使っていました。

 一方で、静脈認証の技術はこの20年くらい。簡単に言うと100年の歴史の差があります。関連する特許は日立や富士通、ソニーが持っていますが、こういう技術自体が知られていないのは当たり前ですし、使用例として良いものもなかった。

 日本では銀行のATMなどで使われていますが、日本は基本的に性善説じゃないですか。自分は大丈夫、というような感覚を誰もが持っている。諸外国と比較してセキュリティについてセンシティブな社会ではない日本の企業が特許をもっているので、なかなか普及していないということも背景にあるのかもしれませんね。

 もし、静脈認証の技術がアメリカ発祥だったら、もっと違った状況になっていたかもしれませんね。

――発明したのは日本人なのでしょうか。

 もともと学術的に特許を持っていたのは韓国の方です。しかし、この技術がビジネスとして発展しないと考えていたのか、失効していました。私の理解では、静脈認証を使って初めにビジネスにしたのは、富士通や日立です。

 特許については大きく2つあって、どうやって静脈の情報を取るかという光学的な特許と、取った静脈の情報を認識するアルゴリズムです。この2つについて、ソニーは特許を持っていました。同様の技術について、日立は日立流の技術を、富士通は富士通流の技術を持っています。