営業とマーケティングが
協力し合う仕組み

 ここで、冒頭の問題に戻りましょう。営業部門とマーケティング部門が連携してより大きな成果を生み出すにはどうすればいいのでしょう。まず、対立の原因が自部門の役割だけを考えるところからきているという点に注目して、解決策を考えてみましょう。

 例えば、営業部門の役割の中に、連携の必要性の高いマーケティング部門の機能の一部を取り込むという方法があります。

  営業部門の役割は、既存の製品やサービスをできるだけ売ることだと述べましたが、実はそれ以外に、2つの重要な役割があります。1つは、既存の顧客を観察 し、時には質問することで、現在の製品やサービスをどのように改善すればさらに売上げが伸びるかを理解し開発に提案することです。もう1つは、既存顧客の 満たされていないニーズや、顧客の業績向上を阻んでいる問題を突き止め、それを解決するために自社の製品をどのように使ってもらえるかを顧客に提案するこ とです。

 もちろん、営業がこれら一連の活動で成果を出すには、「既存の製品を売るのは当たり前」であり、次にどのような製品を売ればよいかにつ いて、「顧客から聞き出さなければならない」ことを自覚しなければなりません。この自覚があって初めて、顧客に対し、どのような質問をしたらよいかを考え ざるようになります。

 マーケティングの人たちが机に座ってデータ分析をしているのではなく、顧客に接触しインタビューすることが不可欠要素になるように、 営業も既存製品だけを売るのではなく、マーケティングの視点を持って顧客に接する必要が出てくるわけです。自部門のことだけを考えていた時は“邪魔”に思 えたマーケティングからの提案が、より広い経営者の視点を持ったとたん、“自部門がこれから取り組むべきこと”に見えてくるはずです。

 このような意識が営業やマーケティングの人たちに醸成されていて、実際に日常の行動の中に生かされている組織では、営業経験者をマーケティングスタッフに起用する などのジョブローテーションが有効です。ただし、広い視点を持てない人は、異動しても成果を上げることはできません。

 一方、意識の変革も行動もできない人 が多い企業では、営業とマーケティングの両業務を経験した優秀な人たちから成る「営業とマーケティング間の調整機能」を設置して、両部門の“わがまま”を 言いっ放しにさせないようにするのも一案です。もちろん、マーケティング部門のバリューチェーン(仕事の大きな流れ)の節目で、営業部門の優良担当者を巻 き込んで討議できる仕組みを作っておくことは、最低限必要な取り組みといえるでしょう。
 

◆営業部門とマーケティング部門の対立の原因◆
1.営業は既存製品の販売だけを考え、マーケティングは売上増大の新しい取組みだけ考えているために対立が起こる。
2.全社をあげて顧客の満足を高めるという視点が両部門に欠如している。
3.対象顧客を理解することが重要であるにもかかわらず、理解に必要な能力やスキルが欠如している。

問題解決の具体的アクション◆
1.自部門だけではなく全社をあげて企業業績の向上に取り組むという意識を全構成員が持つ。
2.営業は、顧客の満たされていないニーズを理解するためのスキル、マーケティングは顧客やエンドユーザーを観察・質問し現場から学んだことと、データの両面から施策を考える能力を身に付ける。
3.意識醸成によるスキル獲得が困難な場合は、営業とマーケティングの間を調整する機能を作ったり、マーケティング活動のバリューチェーンの節目に営業を巻き込む仕組みを作る。