——節電以外の価値も見出せれば、消費者は自ら進んでスマートメーターやHEMSを付けるようになるということでしょうか。

 そうですね。いま、政府も新たなスマートグリッドの実証実験を行おうとしていますが、テーマは「節電以外の消費者のメリットをいかに出すか」です。節電だけではスマート化は進展しないということがこの数年で分かりました。エネルギーの本当のスマート化、社会へ普及させるというところで、私たちの技術が役に立つと思っています。

「節電以外の価値を見出す」というところを実現してこそ、本当の意味でエネルギーのスマート化が進んでいくんだと思います。

——只野さんたちがやろうとしていることは、エネルギーのスマート化のためのエコシステムを作ろうとしている、ということでしょうか。

 はい、政府の補助金に頼らずに自立的にスマート化が進むということを目指しています。私たちが提供するデータによって多くのビジネスチャンスが生まれ、さっき申し上げたような家電メーカー、広告会社、セキュリティ関係など、さまざまな企業がビジネスしようとしてくると思います。そういう価値を見出せれば、結果的に消費者にとって節電、電気代が安くなる、さまざまなサービスを利用できる、といったメリットが生まれるでしょう。

ワクワクだけでは語れない
でもリスクはとりますよ

——只野さんの事業は、もともとソニーの新規事業として取り組まれていたものがきっかけだったと聞いています。

 新規事業創出部門ホームエネルギーネットワーク事業開発部が母体です。私は統括部長でした。海外人員も含めると60名くらいの部隊でした。インフォメティスに移ったのは13人。全員ソニー出身です。

——本連載の第1回で近藤哲二郎さんにお話を伺ったとき、「企業はフェードインするビジネスを常に育てていかないといけない」ということがありました。それはソニーにとっても重要な話しなのですが、只野さんがやられていたことはまさにソニーにとって「フェードイン」する新しいビジネスだったと思います。しかし、ソニーは自社で行わず、インフォメティスは外に出ました。

 あの部署ができたのは2010年1月でした。そのときは、次の時代に役立つソニーの技術を使ったビジネスを考えようということでスタートしました。既存のソニーの事業にとらわれず、自由な発想でやっていいということを言われていました。

 そう言う意味で、すばらしいチャレンジの機会をソニーにはもらいました。ソニーだからこそ、やらせてもらえたと思っています。

 独立するときは、いくつかの選択肢がありました。ソニーの関連会社のような形でやっていくか、それともまったく別のソニーとは関係のないところでやっていくか。結果的に私たちは後者を選びました。ソニーも集中と選択をしていくなかで、私たちを中に置いておくか、外に出てやってもらうかということを選択したんだと思います。