2013年度の連結決算では、対前期比で営業利益が7倍というV字回復を果たした川崎重工のバイク部門、モーターサイクル&エンジンカンパニー。08年のリーマンショックの直後には、4期連続で営業損失を出したが、いかにして復活したのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)
下を向いて口を開けているゾウのような形をしたタイのちょうど口元の辺りに、首都バンコクがある。世界一といわれる名物の交通渋滞では、自動車の隙間を縫って走るモペッド(ペダル付きで自転車にもなるバイク)や、スクーターの大群が途切れることがない。
色とりどりの流線形のデザインのバイクが走るバンコクから南東へ約110キロメートル向かった先にあるシラチャ市。タイで最大の貿易港で、物流の一大拠点となっているレムチャバン港を中心にして外側へ広がるように外国の自動車メーカーや部品メーカーが入る大規模工業団地が開発されている。
その一角に、川崎重工業のタイ工場(KMT)がある。1997年に発足したKMTは、世界戦略車「Ninja 250」シリーズなどの中・大型バイクを製造するばかりではなく、ユニット単位の部品も製造して海外の約10拠点に出荷・供給する輸出基地の役割も担う。
Photo by Hitoshi Iketomi
生産されたバイクは、ほとんどが欧州、米国、日本などの先進国に輸出されるが、一部はタイ国内と近隣諸国に向けて出荷される。KMTでは、「Ninja 250」などに加えて、2012年には重量級の「Z800」をマザー工場である明石工場(兵庫県)から移管された。