インドでは先の総選挙で最大野党の「インド人民党」(BJP)が大勝し、10年ぶりに政権交代が実現し、同党のナレンドラ・モディ氏が新首相に就任した。モディ氏は西部グジャラート州首相として経済を活性化させ、その手腕に期待が高まる。なぜなら、インド経済はこの3年ほど、経済成長率の低下、経常赤字の拡大、インフレ率の上昇に直面しているからだ。
マッキンゼー・アンド・カンパニー インド支社前チェアマン、現シニアアドバイザー。インドの大企業がグローバルレベルでの競争に勝つための支援を行う他、公共分野のリーダーと協働して経済成長、生活水準の向上、国家建設等取り組んでいる。またチャンドラー氏と共に書籍“Reimagining India”の共編者でもある。
世界有数のコンサルティング会社・マッキンゼー・アンド・カンパニーのシニアアドバイザーを務めるアディル・ザイナルバイ氏と香港に拠点を置くバレンロック・グループ(Barrenrock Group)代表のクレイ・チャンドラー氏に、インド経済、その停滞と内在する経済発展の可能性、日本企業が担える役割などについて話を聞いた。二人は2013年に出版され、政治経済、スポーツ、芸術面などあらゆる分野においてインドがかつての超大国へ復活するための潜在力を分析した“Reimagining India: Unlocking the potential of Asia’s next superpower”の共編者である。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 原 英次郎、編集部 小尾拓也)
1992年の自由化が高成長の始まり
――まず、おさらいですが、2000年代に入って、インド経済は非常に高い成長率を達成してきました。この高い成長率を達成した要因はなんでしょうか、また他のBRICs諸国、特に中国と比較して、どこに特徴があるのでしょうか?
ザイナルバイ インドの高い成長を理解するには、1992年に起こった大幅な自由化を理解することが重要だと思います。最もインドが繁栄したのは、2004年から2010年の間で、この期間に成長率は8.5~9%を維持していました。このような素晴らしい成長率の裏には、この92年の自由化があったのです。
まず、インド経済の構造を紐解いてみると、GDPの構成比は18%が農業分野、同じく18%が製造業分野、62%がサービス業となっています。これが中国などと大きく違っているところで、中国はサービス業の比率はあまり高くなく、主に製造業依存型になっている。したがって、これまでの高い成長、そして将来の潜在的な成長は、この経済構造からもたらされると言えます。
つまり、インドの高い成長は、主にサービス業の伸び、製造業の伸び、そして主にこれらの業界に対する消費の伸びからもたらされるわけで、必ずしも投資からもたらされるものではない。ここがもうひとつ中国との大きな違いです。中国は主に製造業に対する投資から、成長がもたらされています。