ことの本質からはずれた議論をいくらしても意味はない。それは時間の浪費でしかない。だが、世の中には意図的にことの本質に触れないように議論をうまく(?)リードする人たちもいる。
彼らの狙いは何か。それは自分たちにとって都合の良い結論を導き出すことであり、また議論したとのアリバイづくりでもある。そのために本質を誤魔化したり、矮小化を図ったりする。さらにはすり替えや目くらましといった手練手管を使う。
こうした狡猾な手法は議論の場だけでなく、演説や記事などにも横行している。それゆえに、細心の注意が必要となる。
組合長の自殺で漁協は方針転換
ついに行われた最上小国川ダムの採決
山形県最上町で6月8日、小国川漁協(高橋光明組合長)の総代会が開催された。会場となったのは、廃校となった小学校の体育館。県が計画する「最上小国川ダム」に関する協議と採決が行われ、その結果に注目が集まった(連載第92回、第93回参照)。
最上小国川ダムは、赤倉温泉(最上町)の洪水被害対策として県が建設を推進する治水専用ダムだ。環境への負荷が通常のダムよりは少ないとされる「流水型ダム」(穴あきダム)で、堤高は約41メ―トル。総事業費は約132億円((あくまでも県の試算))とされる。
これに対し、最上小国川に漁業権を持つ小国川漁協は「ダムによらない治水」を求め、一貫してダム建設に反対してきた。その先頭に立っていた組合長が今年2月に自ら命を絶ち、事態は急展開する。
漁協のトップ交代と県から漁業振興策が提示されたことがあり、漁協理事会は多数決(6対4)で方針転換を決定した。6月8日の総代会に、「ダム建設やむなし」とする理事会提案の決議案を諮ることにしたのである。
注目の総代会は非公開で進められ、総代間での協議の後に無記名投票となった。結果はダム受け入れ決議案に賛成が57票、反対が46票。ダム容認が過半数を占めたが、むしろ、着目すべきは賛成が3分の2には届かなかった点にある。